はじめに
身近な人から犯罪被害を受けた場合の相談
配偶者や、同居中の交際相手からDVを受けた場合、離れて身の安全を守るにはどうしたらよいのでしょうか。
夫や同居中の交際相手から身体的暴力を受けた場合、加害男性との接触を避けるため、法律上の手続きとして、「保護命令」の申立が行えます。
申立てから10日~12日程度で、裁判所から夫や交際相手に対し、6ヶ月間の接近禁止や、同居中だった住居からの退去、子や親族への接近禁止、などの命令が下されます。
保護命令に違反した場合、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」の罰則が科されます。
なお、保護命令の申立に至る可能性を考慮し、男性から身体的暴力を受けた際には、時間を置かずに医療機関を受診したり、警察や配偶者暴力相談支援センターなどへ相談したりして、被害を受けた状況を証拠として残しておくと後々役に立ちます。
また、「加害者がいつ現れるか分からないので、同居していた自宅に戻るのが怖い」という方については、民間シェルターへの一時避難も必要に応じて検討した方がいいかもしれません。各地方自治体で、シェルターに関する相談窓口を置いている場合が多いので、事前に問い合わせをしてみましょう。
加害者から身を隠す場合の注意点
加害者に現在の居場所を知られたくない場合の方法・工夫として、以下のようなことが挙げられます。
①実際の居場所を教えるのは、最低限の周囲の人間にとどめること
②一時避難をする場合は、通常どおり学校や職場に出向くことは危険なため、避けること
加害者があなたの学校や職場をすでに知っている場合には、あなたに会うために学校や職場にやって来る可能性があります。避難前後に、学校や職場に事情を話して連絡をするとともに、「加害者から問い合わせの連絡が来ても、居場所などを一切教えないように」と説明をしておくことが必要です。
③自宅の電話やパソコンのメールの履歴を消去しておくこと
自宅の固定電話やパソコンから知人などに連絡を取っていた方は、その履歴自体を消去しておかないと、加害者が後で通話履歴や送信履歴を調べてあなたの居場所を特定する可能性があるので、関係各所への連絡の痕跡をできるだけ消去しておくことが重要です。
④住所録や手帳、子どもの学校の連絡網、病院の診察券など、あなたの行動範囲・交友関係がわかるものは、すべて持ち出して避難すること
携帯電話のGPS機能をオンにしておくと、携帯電話の電波の発信場所から現在の居場所を加害者が特定する場合があります。細心の注意を払い、新しく携帯電話の契約をし直すことも検討しましょう。
加害者との示談の意味・メリットについて
犯罪被害に遭った際に、害者側の弁護士から、示談の話を持ち掛けられることがあります。被害者の方に代理人弁護士がついている場合であれば、示談の交渉自体を任せることができますが、そうでない場合は、示談の内容や意味合いについてよく理解しないまま、加害者側のペースで納得いかない示談をしてしまわないよう、注意する必要があります。
示談というのは、被害者と加害者との間で、被害者が受けた損害(金銭的なものや精神的なものを含めて)についてのさまざまな約束事を決める、民事上の合意(契約)です。
一般的には、「慰謝料」や「解決金」という名目で、加害者が被害者に対し、一定金額を支払う義務を負うことや、被害者が加害者を「許す」とか「加害者に対し処罰を望まない」といった言葉が合意に含まれることが多いです。
刑事裁判では、こうした合意を記載した「示談書」が、加害者側にとって有利な証拠として裁判に提出されることになります。これにより、示談の成立を裁判官が認めると、最終的に加害者に下される処分(判決内容)も軽くなります。
また、刑事裁判が終了しても示談の効力は生き続けるので、もし示談書に記載された約束事を加害者が反故にした場合、合意に反する行為をしたとして、加害者に対し、民事上の損害賠償請求を行うことも可能です。
場合により、被害者の方は、加害者側が提示した条件をそのまま呑むのではなく、被害者の心情や生活状況などに配慮した内容を、合意に盛り込むこともできますので、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
また、加害者側から提示された慰謝料などの金額が、相場として適切なのかどうかについても、弁護士に尋ねてみてください。
執筆/シティ総合法律事務所奧野舞(「弁護士」というと、敷居が高く、話しにくいと思われるかもしれませんが、我々自身、そういう弁護士は苦手で、親身に温かく皆様のお悩みをお聞きする温かい法律事務所であると自負しておりますので、どうぞご安心して、何でもお気軽にご相談ください。)
元記事:【女性必見!】もしも犯罪被害に遭った時、知っておきたい知識8選
(記事提供/シェアしたくなる法律相談所