東京-大阪が片道2万円、完全個室の豪華高速バスが登場します。

新幹線を使った方が「安くて早い」にもかかわらず、なぜこのような一見“コスパが悪い”サービスが生まれたのでしょうか。

運営元に話を聞いてみると、納得のメリットが見えてきました。


全席11席、完全個室のプレミアム高速バス

関東バスと両備ホールディングスは、1月18日から全席個室の高速夜行バス「DREAM SLEEPER(ドリーム スリーパー)東京・大阪号」の運行を始めます。

運賃は大人片道2万円(2月28日までは、運行記念割引として大人1万8,000円)。新幹線を使うと、東京-新大阪の移動は普通車自由席で片道1万3,620円、グリーン車を使った場合でも19,230円なので、今回の便の価格設定はかなり高額です。

加えて、新幹線を使うと2時間30分程度で移動できますが、高速夜行バスでは8時間。お金も時間もより多くかかってしまいます。

過去、高速バスは時間を気にせずに、ひたすら安く移動したいという人が消去法で選ぶような移動手段でした。事業者の参入が増え、低価格化競争が劇化し、現在、高速バスの価格比較サイトを見ると、東京-大阪間が1,400円という驚きの料金で提供されている激安便もあります。

しかし一方で、夜の時間を使って効率的に移動しながら「しっかり睡眠を取りたい」というニーズも高まってきました。

シート数を減らして座席間にゆとりを持たせたり、座席間にカーテンを用意したり、女性専用車両を用意したり……、各社さまざまな工夫を凝らしたプレミアムな車体を投入。利用者の心地よい眠りを目指します。

そんななか登場した真打ち“ドリームスリーパー”。これまでのサービスとどこが違うのでしょうか?

完全個室でリラックスできる空間に

まず、特徴的なのは1台にたった11席しかない、全室扉付きの「完全個室」の座席です。

これまでにもカーテンなどでほぼ個室化した車体はありましたが、扉付きの完全個室型の車体は業界初。扉にカギをかけることはできませんが、座席後方に乗客の動きが見えるカメラを設置することで保安基準をクリアしました。乗客のプライバシーに配慮し、座っている間は運転席のモニターにカメラの映像は映らないようになっていますが、着替えなどは注意が必要です。

そして、「まるでホテルに宿泊しているような感覚で、東京・大阪間を移動することができる」(関東バス)と語るように、車内設備も大充実しています。

カーペットが敷かれた社内は土足禁止。提供されるスリッパへ履き替えて乗車します。

座席シートには、昭和西川が開発した「ムアツクッション」を採用。ボタンひとつでリクライニングが調整でき、浮遊感を感じるようなゼロ・グラビティの姿勢でリラックスして過ごすことができます。

気になる寝心地は「相当よい」とのこと。備え付けのヘッドホンを使って聞くことができるBGMには安眠を誘うヒーリング・ミュージックを4種類も用意する念の入れようです。

ほかにもブランケット・アイマスク・耳栓・歯ブラシセットなどをアメニティとして用意。各座席には、プラズマクラスターも完備しました。

温水洗浄機能を備えたトイレに加え、明るく使いやすい独立のパウダールームも設置されているので、メイクが気になる女性にはうれしいですね。

女性は「仕切り」を求める

全国の高速バス・夜行バスの料金比較が簡単にできる「夜行バス比較なび」を運営する株式会社LCL・広報課の遠藤氏によると、「高速夜行バスユーザーは若い女性が多く、同社のサイト利用者の約7割が女性のお客様」とのこと。高速バス業界では女性客の心をつかむことが必須です。

昨年、同社と株式会社ゼンリンデータコムが女性を対象に行ったアンケート(調査対象1,008人)では、女性が「高速バスにあってほしい」と思っているサービスの1位は「仕切りカーテン」でした。Wi-Fiや電源コンセントを抑えた結果に、同社も驚いたそうです。

また、「長時間の高速バスで利用したいシートは?」という問いの答えは、10代から50代まですべての世代の女性が「高いけど広いシート」と回答。

女性たちの本音から、“安さより快適さ”を重要視する傾向がみられました。

2万円というプレミアムな便の登場について遠藤氏は、「高速バス利用者は右肩上がりに増えています。参入事業者も増加し、各社、差別化に力をいれている。多様な便が登場し、選択肢が増えることで、お客様が高速夜行バスでの移動を選ぶ理由が増える」と業界全体の盛り上がりに期待を寄せます。

運行元の関東バスは、「新幹線で移動し、もし一泊6千円程度のビジネスホテルに泊まるとしたら、トータルで2万円になります。インバウンド需要でホテル価格も高騰傾向。バスのなかで、ゆっくり眠れるのであれば十分需要がある」と新プランへの自信を語ります。

大阪行きのバスは22時50分に池袋を出発し、翌朝6時40分大阪・なんば(OCAT)、7時30分に両備バス門真車庫に到着します。

ぐっすりと眠っている間に移動が叶い、移動時間を意識することなく、朝早くから現地で行動を開始できるのであれば確かに高速夜行バスという選択は効率的です。

運行は今月18日から。「第1便の予約はすでに完売」と、熱い視線が注がれています。

(文:編集部 樫本倫子)