はじめに
無自覚な加害者の存在
特にセクハラにおいては、男性が女性に対してしてしまうイメージがあります。確かに、加害者は男性であったり、権力者であったりするケースが多いのかもしれません。しかしながら、別の観点から、気になるコメントも寄せられています。
「みんなの前で見せしめのように怒られたりするパワハラを受けたことがあるが、やってる本人は自分がやってるという認識がない。社内でそういう研修もしていたが、研修している本人がやってるんだからどうしようもなかった(40代:パート/アルバイト)」
他にも、「ハラスメントする側に全くしている意識がない(40代:パート/アルバイト)」「あ!これハラスメントだよね。訴えないでねと冗談にされる(40代:契約社員)」「気づかないうちに被害者や加害者になっている可能性もあるからハラスメントの定義をしっかりと決めたら良いと思う(20代:今は働いていない)」などの声もあります。
悪意を持ってハラスメントしているケースはもちろん責められるべきですが、怖いのは、ハラスメントの加害者が自分自身を加害者だと認識していないケースです。悪意がないからこそ、再発の危険性があります。冒頭にご紹介した知的障害がある人のように、実際に声をあげて指摘するのはとても勇気がいります。しかし声を上げなければ、無自覚な加害者は同じ行為を悪意なく繰り返してしまう可能性があります。
ハラスメントを受けると、人は傷つきます。しかし加害者に対して主張することでさらに傷つけられることを避けるために主張できず、結果、加害者は加害者であることに気づかないまま、新たなハラスメントを行ってしまう。そんな負の循環が日本中の職場で生じている可能性は否定できません。
ハラスメントを減らす方法
ハラスメントを減らすには、ハラスメントを受けた側が勇気をもって主張する!というのは、やはり有効な対処策の一つです。悪意ある加害者だと、それでも止めずに繰り返す輩もいるかもしれません。しかしながら無自覚な加害者に対しては、指摘されることが抑止力となり、再び加害者になってしまう可能性を下げることができるはずです。
ただ、ハラスメントを受けた側が勇気を持って主張するのは、簡単なことではありません。ハラスメントを減らすもう一つの方法、それは自分自身が意図せず加害者になってしまう可能性を認識し、自らの言動を常に気にかけるということではないかと考えます。
もちろん無意識に加害者になってしまうケースを察知するのは難しいことです。それでも気にかけるだけで、無意識の加害者になってしまう可能性を減らすことはできるはずです。周囲に、もし無意識に人を傷つけるような言動をしてしまった時は注意してね、と頼んでおいても良いかもしれません。周囲も伝えやすくなるはずです。
「自分自身、独身の頃はパワハラをしてしまったかなと今は思うけれど、当時はその意識は薄かったと思う。現在パワハラを受けたりすることもありいつまでもその記憶は消えないので、この先は気をつけていきたいなと感じます(40代:パート/アルバイト)」
職場でのハラスメントを完全にゼロにすることは簡単ではないのかもしれません。しかし今よりも減らすことは、一人ひとりの心がけで十分可能なのだと考えます。