NP0「キッズドア」は、生活困窮世帯を対象に親の年収差が招く教育格差の背景を調査。調査を受けて、渡辺由美子・キッズドア理事長は食料を買うのにも苦労する家庭が少なくないこと、低所得・低学力の家庭の子どもも関わり次第で中退が減ることなどを指摘しました。前編「大学生を見たことがない」子どもたち…日本が抱える貧困問題」

引き続き、渡辺理事長にお話を伺います。


いまだ続く「女だから学問をあきらめる」社会

――調査結果からは、低所得の家の子どもは勉強机もないなど本人のやる気とは関係ない理由で低学力に陥ることが見てとれます(前編)。しかし、貧困家庭の子どもへの学習支援に対して「怠けているだけ」といったバッシングがあると聞きます。

キッズドアにも「金もなく、怠けている子どもに支援が必要なのか」「無駄な事業だ」などの声が寄せられることがあります。

――現在、日本の大学進学率は50%超。進学した50%側にいると自分が努力した分、「今どき、大学まで行くのは当たり前」「行けないのは努力不足」と思うのかもしれません。

低所得の家の子は、確かに大学進学率が低い傾向にあります。でも、当の子どもに希望する学歴を聞くと「大学まで行きたい」と言います。今回の調査でも、約4割の子どもが大学に進学したいと答えました。一方で、「子どもを大学に行かせたい」という保護者はそれより低い約3割しかいませんでした(表1)。

(表1)

※子どもに希望する最終学歴を、保護者に子どもに望む最終学歴を聞いた。大学進学に関しては、親は子ほど大学進学を望んでいない。文科省による類似調査では、大学進学を希望する親の割合は53.9%。キッズドアの調査結果29.3%と比べると、24.6%も上回って、親が大学進学を希望している。

貧困家庭は、親は子どもほどには大学進学を望んでいない。親子で希望する学歴にギャップがあるわけです。保護者に理由を聞くと、「経済的な理由で」という人が少なくなかった(表2)。

(表2)

※保護者に子どもに希望する最終学歴に関して「なぜその学歴を希望するのか」理由を聞くと「家庭に経済的な余裕がないから」が19.7%だった。経済的な理由で子どもに大学進学を望めない家庭がある。

親は働き手が欲しいので、大学進学はあきらめて欲しい。こうしたことが、低所得の家庭の子の学習意欲を減退させている可能性があります。でも、学習支援を受けて勉強に楽しさを感じた子は、当然、本当は大学でもっと学びたい。切ないです。

とりわけ、女の子は学力に問題はなくても母親の苦労を考えたり、親が男兄弟の進学と将来を優先したりなどで、大学に行きたいのに諦めざるを得ないことがあります。そして、シングルマザー同様、女子ほど貧困のループから抜け出せなくなっていく。

「勉強はできるのに、女だから学問を諦める」というのは、昔の話ではありません。「経済的余裕がないから、働いて欲しい」と親が思わなくてもいい支援や政策が必要です。

――自治体の行政の教育関連の担当の方からも、「勉強が得意ではない子に、無理に大学に行かせる必要があるのか?」と言われることがあるとか(渡辺理事長の著書『子供の貧困 未来へつなぐためにできること』(水曜社発行)より)。

はい。本人のやる気だけの問題ではなく、勉強が得意でないかどうかも断定できない。現実としても、高卒だと貧困から抜け出しにくい。そういう社会にも関わらず、です。