はじめに
日本ビール業界のガラパゴス化に終止符
実はこのゆがんだ税制はふたつ大きな問題を起こしています。
ひとつは日本人の味覚を狂わしてしまうということです。各メーカーは努力を重ね、ビールとよく似たビールテイストの飲み物を開発しました。味が似ているからいいじゃないかというわけですが、つまりは日本人みんながまがい物を飲むようになったわけです。
そしてもうひとつの大きな問題は、日本だけ税制がおかしいために、日本のビールメーカーは“ビール風”を叶える香料や調味料の研究ばかりに熱心になってしまい、世界市場の中でガラパゴス化してしまったのです。
海外にはバドワイザーやハイネケン、ミラー、クアーズといった世界中で売れているビールが存在します。アジアにも中国の青島ビールや、フィリピンのサンミゲルのようにその国を代表するビールがあります。
ところが日本のビール業界は発泡酒や新ジャンルへ経営資源を投入しすぎたため、このままではグローバル競争から取り残されてしまいそうになっているのです。
ビール市場は10年かけて二極化する
政府税調は今後10年かけてビールとビールテイストの発泡酒、第三のビールの酒税を一本化することを決めました。「値段が安いから」と発泡酒や第三のビールを選んでいた消費者にとっては、あえてそれらを選ぶ理由は少なくなっていくでしょう。
新しいブランドを立ち上げ育てるためには何年も時間がかかるので、10年後には消えてしまうかもしれない発泡酒や第三のビールにおいて新ブランドを立ち上げる意味がほぼなくなったのです。
これから10年かけて市場はビールに商品が一本化される方向に動いていくでしょう。そして、ビールとプレミアムビール、このふたつの商品ジャンルに勢力が集約されていく。
ブランドを挙げると、アサヒの「スーパードライ」とキリンの「一番搾り」の二大ブランドが競争する通常のビール市場と、サントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」とサッポロの「ヱビス」が競争するプレミアムビール市場。このふたつの勢いが再興し、新たなブランドはその競合を狙ったまったく新しい商品になるでしょう。
未来に向かったビール業界の再編成が始まります。