近頃、マスメディアで「人手不足」や「時給アップ」という言葉をよく耳にします。またそれに合わせるように、「人件費増により業績悪化」というワードも聞かれるようになりました。

特に、外食企業ではアルバイト比率が高いため、時給アップ=人件費増=外食企業の業績悪化、とみられているケースが多いのが現状です。では、本当に外食企業は軒並み業績悪化しているのでしょうか?


上場企業72社の決算を調査

上場外食企業102社を決算期でみると、2月決算の上場外食企業は20社、3月決算は52社、12月決算が12社、6月決算が4社、9月決算が3社、それ以外が11社です。いちよし経済研究所では2月決算の上場外食企業の2019年2月期第2四半期累計(3~8月)と3月決算の2019年3月期第2四半期累計(4~9月)の売上高人件費比率を調べてみました。

すると、2月決算で、20社中人件費比率が悪化したのは12社、改善したのが8社でした。3月決算上場外食企業52社中、22社の売上高人件費比率の改善が確認できました(IFRS採用企業等4社は人件費の動向は確認できず)。

現在、約6割の外食企業が人件費比率の上昇で業績が悪化し、4割の外食企業は人件費増を吸収して営業利益を伸ばしているというのが現状の姿です。

パート・アルバイトで働く人のニーズは?

総務省の「労働力調査」(平成29年)によると、パートタイム・アルバイトなどとして働く人の「現職の雇用形態についた主な理由」では「自分の都合の良い時間に働きたい」がトップ、「家計の補助・学費等を得たい」のほか、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」が上位になるなど、様々な目的が重要視されています。

また、民間の人材派遣会社が毎年調査している「人気のアルバイトランキング」を見ると、「おしゃれな雰囲気」「利便性」「趣味系」「シフト重視」の4つに分類することができます。

単に時給を上げて求人をしても、採用難は続く見通しと考えられます。今後は様々な効率化を行いながら、働く人のニーズをくみ取った雇用形態や業態の魅力をアピールし、様々な人材を確保することが求められていると考えられます。

現在は様々な外食企業が働きやすい環境作りを積極的に行っています。以下は、いちよし経済研究所がピックアップした5項目に取り組んでいる上場外食企業を紹介します(重複含む)。

(1)ブランドの魅力型
ブランド魅力型では、ハブ(3030、東1)やジェイグループホールディングス(3063、東マ)、DDホールディングス(3073、東1)、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387、東1)などがあげられます。カフェ業態やスィーツ業態を傘下に持っており、エリア採用を行うなどで人手不足に対応しています。
(2)身近型
身近型では、くらコーポレーション(2695、東1)、日本マクドナルドホールディングス(2702、JQS)など店舗数が多い会社があげられます。学生が通学途中にあるなど利便性が支持を得ています。
(3)シフト重視型
シフト重視型では、日本マクドナルドホールディングスなどは週2時間勤務からの勤務が可能、休憩室などバックヤードの整備など、給与面以外も充実させることで従業員満足度の向上を進めています。
(4)生産性向上型
生産性向上型では、イートアンド(2882、東1)や王将フードサービス(9936、東1)などは、店舗内の作業を軽減して労働時間の短縮を進めています。
(5)ES重視型
ES重視型では、物語コーポレーション(3097、東1)があげられます。地域限定社員制度、時短勤務制度など多様な働き方への対応や地方出身の新卒者を対象にWEB面接を導入。地方出身者の面接にかかる交通費等も考慮しています。

(文:いちよし経済研究所 企業調査部 鮫島誠一郎)