はじめに
毎年恒例となっているパーソルキャリアがまとめた「平均年収ランキング」。転職サービス「doda(デューダ)」のエージェントサービスに2017年9月~2018年8月の1年間に登録した約36万人のデータを元に、正社員として働く20~65歳の平均年収をまとめたものです。
今年はいったい、どんな結果となったのでしょうか。その理由とともに、労働市場の現状を掘り下げてみます。
全体の平均年収は2年連続の減少
本題に入る前に、まずは調査の全体像を概観したいと思います。2018年の調査対象者全体の平均年収は414万円。2015年が440万円、2016年が442万円、2017年が418年でしたので、わずかながら2年連続の減少となりました。
特に足を引っ張ったのが、40代以上の年収ダウンです。20代は2017年から横ばいで346万円、30代も前年比3万円減の452万円だった一方、40代は同13万円減の528万円、50代以上は同15万円減の645円と大幅に減少しました。
「40代、50代の平均年収は年々減少傾向にあります。年功序列の崩壊や、年齢に関係なく経験・給与で募集を行う企業が増えていることなどが要因と考えられます」(パーソルキャリア)
職種別の平均年収ランキングでは、投資銀行業務(2位、825万円)、運用(3位、803万円)、アナリスト(6位、680万円)など、金融系の専門職がトップ10の中に3つ入りました。また、業種別ランキングでは、投信/投資顧問が839万円で、2位の医薬品メーカー(611万円)を引き離して断トツのトップ。金融系の強さが際立ちました。
ただ、金融系といえども、全体の年収のダウントレンドには逆らえなかったもよう。たとえば、投資銀行業務の場合、2017年の平均年収は855万円だったので、今年は30万円の大幅ダウン。運用も34万円の急減となりました。
女性が優位だった4職種とは?
これまで調査そのものは実施していたものの、今年初めてプレスリリースを出したのが「女性の平均年収ランキング」です。この女性ランキングを男性のものと比較し、順位の差が特に大きかった職種が4つありました。
リサーチ・市場調査 (女性16位:489万円、男性44位:536万円)
薬剤師 (女性22位:464万円、男性40位:541万円)
データアナリスト・データサイエンティスト (女性24位:463万円、男性49位:526万円)
広報・IR (女性29位:442万円、男性50位:525万円)
の4職種です。
なぜ、この4つで男性よりも女性のほうがランキング上で上位になったのでしょうか。パーソルキャリアでは、次のように分析しています。
理由の1つ目は、これらは女性の中でも相対的に上位にランクインしやすい職種という点です。この4職種は、専門知識を生かす業種のため、性差にかかわらず活躍でき、給与水準が高いという特徴があります。
また、結婚・出産後も続けられたり、労働環境が良いなど、30代以降も継続して就業しやすく、若手が多い職種よりも年収の平均値が底上げされやすい傾向もあるようです。
もう1つの理由が、男性の中では相対的に順位が中盤以降になりやすい職種という点。たとえば、データアナリストは比較的新しい職種のため、40~50代で活躍している管理職世代が少なく、年収の平均値が低くなりがちな傾向があります。
また、コンサル系の職種や士業、経営の中枢を担う企画・管理系職種のほうが給与体系が高く、上位にランクインしやすいため、上記の4職種はランキング的にはこれらに見劣りしてしまうようです。