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経済成長率の減速は、本当に不幸せなのか

株価の下落予想にも直結しない?

最近、「2019年の世界経済の成長率は減速する」といった報道を目にします。

今年10月にIMF(国際通貨基金)が公表した世界の成長率見通しは、2018年、2019年ともに同水準の3.7%で、「減速」とは予測していません。しかし、こと先進国経済については2018年2.4%から2019年2.1%に「減速」すると予測しています。

ただしこれは、あくまで「減速」であって「後退(マイナス成長あるいはリセッション)」とまでは予測していません。では、投資家の観点からは、この経済成長率の「減速」をどのように受け止めれば良いのでしょうか。


先進国経済は、減速でも拡大?

IMFは、2019年の先進国経済の成長率予測を、米中貿易摩擦の影響などを背景に、7月時点(前回)の予測から引き下げましたが、見通しの引き下げ幅は0.1ポイントと大きくはありませんでした。

また、米国の関税引き上げの影響が徐々に表面化する可能性はあるものの、経済規模世界一の米国の成長率予測について、2018年は2.9%で変わりなく、2019年を2.7%から2.5%に引き下げたにすぎません。

ここでのポイントは、たとえ「減速」したとしても、成長率は“0”よりも高いプラスである、ということです。そして、成長率がプラスであれば、企業収益もプラスになると予想することもできるということです。

給料が毎年50万円増えるとき、上昇率は?

私たちにとって身近な給料で考えてみましょう。たとえば、自分の給料が今年500万円で、翌年に50万円増えて550万円になったとします。このとき、上昇率は10%(50万円÷500万円)です。そしてその翌年、さらに50万円増えて600万円になったとします。このとき、上昇率は9%(50万円÷550万円)になります。

お気づきかと思いますが、同じ金額だけ増えたのに上昇率は10%から9%へ低下(減速)しているのです。このことは、経済の成長率を見る上でも同じことがいえます。

先進国の経済のように、基本的に安定している国の経済が高い成長率を実現するケースは、金融危機後などのように、普通ではありえないほど悪い環境から立ち直る過程でよくみられます。

つまり、経済環境がすこぶる悪くGDP(国内総生産)の規模が小さくなった年から、経済環境が急激に回復してGDPの規模が大きくなった翌年の成長率は、高くなりやすいのです。そして、経済環境が正常に戻るにつれて、経済成長率は「減速」しやすくなるのです。

これは、経済が不健全になることでも、平均的な経済人が不幸せになることでもありません。現時点のような、2008年のリーマン・ショックからの正常化がかなり進んでいるなかでは、経済成長率が「減速」することは健全な姿ともいえます。

経済が絶えず循環するなかで、成長率は加速したり減速したりします。同様に、企業収益の伸び率も高くなったり鈍化したりするのです。ここでは、『マイナス』成長とは異なる、ということだけは押さえておいてください。

経済成長率が減速しても、株価指数の上昇は見込める

では、経済の成長率が減速した場合、株価はどのような影響を受けると考えられるでしょうか。要素を単純化して、試算してみましょう。

たとえば、日本の成長率が減速するとしても、“0”ではないプラス成長で2.0%増であったとします。そして、GDPが雇用者報酬(生産活動から発生した付加価値のうち、雇用者に支払った報酬)と企業収益で構成され、それぞれ1対1の割合であったとします。この場合、GDPが2%成長すれば、企業収益の成長率も2%と逆算できます。

ここで、株価指数の構成銘柄の企業収益について考えてみます。GDPを計算する際の対象企業数は広範囲にわたりますが、株価指数の構成銘柄数は代表的なTOPIX(東証株価指数)で2,116となっています(2018年11月末時点、日本取引所グループHPより)。これでは範囲が狭いので、多少修正した上で、2019年度の企業収益(EPS、1月当たり純利益)の成長率は5~10%程度とみて良さそうです。

つまり、経済の成長率が「減速」していても企業収益は「増益」であり、PER(株価収益率、株価÷EPS)が一定であれば、株価指数はEPSの成長率と同程度の上昇が見込める、といえそうです。

もちろん、2019年の株価予想がこのようになるかは、センチメント(投資家心理)などにも依存します。しかし、経済成長率の「減速」予測が株価の下落予想に直結しない、ということは分かっていただけると思います。

<文:チーフ・ストラテジスト 神山直樹>

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