はじめに

今年で10回目を迎える、リクルートホールディングスの「トレンド予測発表会」。12月17日に開かれた今年の発表会では、住まいから新卒採用、飲食まで8つの領域で2019年の予測トレンドがお披露目されました。

この記事では、その中から特徴的だと思われた4つのトレンドをピックアップ。その背後に浮かび上がる、2019年の大きな潮流について深掘りしてみます。


軽減税率で「中食」のグルメ化が進展

2019年の大きなトピックといえば、10月に予定されている消費税率の引き上げでしょう。政府は生活に最低限必要なものに対する措置として、軽減税率の適用を予定しています。こうした流れを受けて、飲食領域で2019年のトレンドになりそうだと予想されたのが「ポータグルメ」です。

これは「ポータブル(持ち運びできる)」と「グルメ(おいしい)」を足し合わせた造語。テイクアウトやデリバリーができて、なおかつ、おいしいグルメに注目が集まると、ホットペッパーグルメ外食総研の稲垣昌宏・上席研究員は分析します。


短い時間で高い満足度を得られるのが「ポータグルメ」の特徴

折しも日本では、労働人口の減少や共働きの増加などによって、個人の役割の多様化が進展。企業でも働き方改革や子育て女性の就業率アップなどに伴い、労働生産性の向上も課題となっています。

こうした中で、消費者はコストパフォーマンスよりもタイムパフォーマンスを重視する傾向にシフトしているといいます。調査会社マクロミルの調査によると、「忙しい時でもおいしいものが食べたいと思う」人の割合は81.6%に上っています(調査対象:4,576人)。

一方で、消費増税に伴う「中食」への軽減税率導入をめぐって、最近は外食企業の中食参入・強化が顕著に。店に加えて、テイクアウトやデリバリーでも料理を提供する“三刀流”の事業者が増加傾向にあります。

同じマクロミルの調査では、「コンビニ弁当などの代わりに、外食店のテイクアウトやデリバリーを利用してみたい」という人の割合は72.4%。外食店からのテイクアウトやデリバリーに期待することとして、「専門的な味」「メニューのバリエーション」が「価格の安さ」を上回る状況となっています。

すでに一部の外食企業はこうした動きを強めています。たとえば、黒毛和牛で有名な「ミート矢澤」は、大丸東京店内のテイクアウト専門店で1つ9,980円(税込み)の「極味弁当」を販売。また、店舗があるにもかかわらず、キッチンカーを出したところ、ランチの売り上げが4倍に増えたイタリアンのお店も出てきています。

新たなタイプの“田舎暮らし”が増加

消費増税といえば、影響度が大きそうなのが住宅業界。しかし、今回の増税に当たっては住宅ローン減税の期間が3年延長されるなど、対策が拡充されることもあって、消費増税がトレンドに及ぼす影響は小さそうです。

むしろ、個人の役割の多様化や労働生産性の向上という流れを受けて、地域とのつながりを求める傾向が2019年のトレンドになるとみているようです。SUUMOの池本洋一編集長は、このトレンドを「デュアラー」と命名しました。

これは、都心と田舎の2つの生活=デュアルライフ(2拠点生活)を楽しむ人のこと。従来は豪華な別荘を持てる富裕層や、時間に余裕があるリタイア層が楽しむものというイメージがありましたが、近年は空き家やシェアハウスを利用して、20~30代が都心と地方の2拠点生活を楽しみ始めているといいます。

2拠点目の地方での住宅は、月額2万円程度の賃貸物件を借りたり、親族から相続した地方の家に住んだり、300万円程度の古民家を買ったり、さまざまな持ち方をしています。共通するのは、いずれも安く済ませているという点です。

リクルート住まいカンパニーの調査によると、デュアラーの年代は20~30代で58%。世帯年収は約半数が800万円未満となっています。2拠点目での年間滞在日数は月平均2~5日が半分弱、2拠点目への移動時間は2時間未満が約6割です。


普通の家庭にも広がりつつある2拠点生活

デュアラーは目的別に6タイプに分けられるそうで、サーフィンや農業などを楽しみたい「趣味満喫型」、自然に触れてのんびりしたい「自然癒され型」、故郷や地元の人との交流を楽しみたい「ふるさと型」、将来移住するために試してみたい「プレ移住型」、のびのびとした環境で子育てがしたい「のびのび子育て型」、地域貢献で存在意義を感じたい「地域貢献型」に大別できるといいます。

同社の推計では、国内の潜在需要は約1,100万人。2018年時点でデュアラー人口は17万人前後とみられているので、かなりの伸びしろが見込まれます。池本編集長は「ロシアや北欧ではデュアルライフは一般的。空き家問題をピンチではなくチャンスにしていくべき」と提案します。

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