はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は三澤恭子氏がお答えします。
30代で離婚し、娘と二人の生活になりました。娘の高校、私立大学の教育費負担が大変でしたが、その娘も2年ほど前に結婚。現在一人暮らしになり、老後の生活を意識するようになりました。投資信託を始めたばかりです。少しずつ購入し、値動きなどの情報を得ながら、勉強中です。今まで、娘の教育費やマンション購入などで、貯蓄はできないと思い込んでいましたが、努力が足りなかったと反省しているところです。退職まであと3年、その後5年間は継続雇用される見込みです。退職金は2000万円くらい。退職時に住宅ローンが1000万円ほど残る計算で、一括返済するか悩んでいます。豊かな老後を夢見て、今からがんばるためのポイントをご教示いただきたいです。
〈相談者プロフィール〉
・女性、57歳、未婚、子供1人(すでに独立)
・職業:公務員
・居住形態:持ち家(マンション)
・手取りの世帯月収:38万円
・毎月の支出目安:30万円
・貯金:800万円
・投資:15万円
・負債(住宅ローンなど):1300万円
三澤: 立派に子育てを終えられ、お疲れ様でした。ご相談は、豊かな老後を夢見て準備に取りかかりたいということですね。住宅ローンの一括返済も思案中とのこと。一緒に考えていきましょう。
老後はどんな暮らしをしたい?
人生100年といわれていますが、平成29年の簡易生命表によると、相談者様の平均余命は31.74歳。57歳まで生きた女性は88.74歳まで生きるというわけです。少なくとも90歳位までのプランニングが必要となります。
今からがんばるポイントは3つ。「家計の見直し」と「資産運用」と「仲間づくり」です。退職までの3年と継続雇用の5年、計8年間で相談者様が夢見る豊かな老後に必要となるお金を積み上げていきます。お金を貯める最後のチャンスです。がんばりましょう。
はじめに、相談者様が夢見ていらっしゃる豊かな老後とは何かを見える化します。かかるお金もかけられるお金も人それぞれ。「誰と? どこで? どのような暮らしをしているのか?」具体的にイメージし、「必要金額」を見積もることから始めます。まずは、老後に想定される以下のようなイベントとそれにかかる費用を書き出してみましょう。
・国内・海外旅行費
・自宅のリフォーム
・車の買い替え
・お料理教室をオープンなどの開業資金
・趣味のお金(ダイビング・陶芸・写真など)
・子供への援助(住宅購入資金・初孫誕生祝)
老後の生活費、いくら必要?
次に老後の生活費はいくら必要でしょうか。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(平成28年度)」によると、夫婦・未婚者ともに、ゆとりある老後に必要な生活費は1ヵ月あたり約35万円。一方、単身無職世帯の最低限必要な1ヵ月の生活費は約15.5万円です(総務省の平成29年家計調査より)。もう1つ忘れてはならないのが、介護費用です。同センターの「生命保険に関する全国実態調査(平成30年度)」によると、平均介護期間は54.5ヵ月(4年7ヵ月)、介護費用は月々7.8万円、自宅の改造など一時金は69万円かかっています。介護にかかる平均総額は約500万円になります。
これらのデータを参考に相談者様の老後生活費を想定してみてください。
老後に必要なお金はいくらになりましたか。現在の暮らしと同じ30万円ほどなのか、貯蓄を増やさないと実現できないのか、確認して現状把握に進みます。