はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回は読者の家計の悩みについて、プロのFPとして活躍する深野康彦(ふかの・やすひこ)氏がお答えします。

現在1850万で購入した一人暮らし向け(1DK)のマンションに住んでおりローンが残り800万弱あります。 近々結婚のためより広い物件に移ることを考えており、住み替えの方法についてご意見をいただきたいです。
(1)新居は分譲で購入する(長く住むため3LDK程度)。現在の住居は売却し、ローン返済と頭金に充てる。
(2)新居は賃貸とする(子供ができるまで2LDK程度)。現在の住居は売却せず貸しに出し、家賃収入からローン返済と賃料の軽減に充てる。
(3)それ以外の方法。
現在の住居は新築で購入し築5年、都内複数路線が通る駅まで徒歩2分の好立地であり、借り手はつくと思っています。 また、マンション以外の全財産を合計すると700万円程になるため、多少無理をすれば一気にローンを返済することも可能な状態です。 この資産をどう活用するのが最良かご教示いたけないでしょうか。
(30代前半、独身、男性)


深野: マイホームの住み替えについてのご相談ですが、結論からいえば案(1)、状況によっては案(3)のそれ以外の方法がよい気がします。

案(3)については後ほどご説明します。

案(2)が厳しい理由は、現在の住居を賃貸に出されるとのことですが、立地のよいところにお住まいとはいえ、中・長期にわたり質問者が期待している賃料を得ることができるでしょうか。

借り手がいる=期待する家賃が得られるというわけではない

立地的に借り手はいるかもしれませんが、借り手がいる=期待する家賃が得られるというわけではないのです。

家賃収入で住宅ローン返済、賃料の軽減にあてるという考え方ができれば言うことなしですが、物件は時の経過とともに劣化して行きます。

また、周り新築の賃貸マンション等が立てば、賃料の価格競争力は劣ってくることでしょう。その際、物件を売ろうと方針を展開すれば、築年数が経過している分、今よりも価格が低下する可能性があります。

もちろん、価格が上昇することもありえますが、日本の人口の減少、足元でさえかなりの住宅が余っていることを考慮すれば、私は将来的には物件価格が下落する可能性の方が高いと思っています。

したがって、案(2)は厳しいと言わざるを得ないのです。

結婚後のライフプランを考慮

状況によって案(3)というのは、質問者が就かれている仕事は転勤とかありませんでしょうか。また、ご結婚を考えているようですが、結婚後のライフプラン等は考えられていますか。

転勤がない仕事であれば案(1)でもよいと思いますが、心配は子どもが生まれた後のキャッシュフローが回るのかということです。

子どもが生まれた場合、奥様の仕事はどうなるのでしょうか。世の中的には、産休を取られて仕事に復帰されるのでしょうが、保育園はどうするのか等を考えたことがありますか。

ご結婚後のライフプランをしっかり考え、キャッシュフローが回るのであれば案(1)を進められてもよいでしょう。

住宅ローンの返済は数十年という長きにわたるものですから、案(1)にするにしても慎重に判断を下していただきたいと思います。

最後に、就かれている仕事に転勤があるのであれば、マイホームの購入は控えるべきでしょう。新居は賃貸にして、当座は今の住まいを賃貸でもよいでしょうが、キャッシュフローが赤字になるようであれば、売却が賢明と思われてなりません。

不動産は保有しているだけでさまざまなコストがかかることから、キャシュフローが黒字にならない限り賃貸に回すのは賛成しかねます。

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