日本が米国より早く景気後退局面入りか

――消費増税の影響はあるでしょうか。

増税の影響を和らげるため、政府が大規模な経済対策を投じることが見込まれるので、増税そのものが2019年の景気を腰折れさせることはないとみています。

ただ、増税前後は駆け込み需要とその反動減で、個人消費の振れ幅が大きくなることは避けられません。増税直後の2019年10~12月期のGDP(国内総生産)が悪化し、ちょうどそれに続いて米国が景気後退局面入りするというタイミングが重なることで、結果的に世界に先がけて日本が景気後退局面入りするというシナリオは十分あり得るでしょう。

――厳しい環境になりそうですね。個人投資家に勝機はあるのでしょうか。

それは十分あると思います。少なくとも日米の景気はまだ拡張局面にあり、2019年に入って突然後退するわけではありません。それなのに足元の日本株はPER(株価収益率、株価の割安度を示す指標)が12倍を割り込んでいます。これは通常なら、明確な景気後退局面でなければ出てこないレベルの割安水準です。

米国経済の減速が顕在化する中で、外国人投資家の米国株一辺倒の姿勢は見直しを迫られています。そこで他国に目を向ければ、欧州はブレグジット(英国のEU離脱)や政治リスクが大きく、中国は対米貿易戦争の渦中にあり、新興国は米国の利上げによる資金流出懸念が大きい。これに対し、日本市場は割安で大きな不安要素もなく、相対的に安心感のある投資対象として浮上してくることは十分考えられます。

そこへ、米中貿易戦争の緊張がゆるんだり、合意なきブレグジットを回避できるなどして短期的に相場が強気となる局面があれば、真っ先に日本株が買われても不思議はありません。タイミングとしては、年初から本決算が発表される5月ごろまでが濃厚で、この時期に2019年の高値をつけるとみています。

ただし、あくまで上昇は一時的なものであり、短期勝負になるでしょう。2018年の下落で含み損を抱えてしまった人には、逃げ場になるかもしれません。

時間を味方にできる個人が勝てる相場に

――近年は世界の主要株式市場に比べて、日本の株式市場はボラティリティ(変動幅)が大きく、リスクの高い市場になっている印象があります。

これは個人投資家にとって必ずしもデメリットであるとは思いません。変動幅が大きい市場では、適正な株価を超えて売られ過ぎたり買われ過ぎる局面が多く出現することになるので、その分、チャンスも大きくなるからです。

売られ過ぎた局面で勇気を振り絞って投資しても、それがいつ報われるかがわからないのが難点ではありますが、時間を味方にして待つことができる投資家にとっては、むしろ有利なマーケットであるともいえます。過剰に売られる局面は弱気相場で出現しやすいので、2019年以降は中長期的な投資チャンスが訪れる可能性が高いといえるでしょう。

――投資対象として注目している業種はあるでしょうか。

これは非常に難しい質問です。一般的に景気が悪化する局面では、外需系より内需系、景気敏感よりディフェンシブが下落しにくいといわれます。一方で、資金の流れという観点では、これまで大きく買われたものから、資金が流出すると考えるのが自然です。

ここ数年の値動きを見ると、内需のディフェンシブ銘柄はこの5年間で大きく買われて上昇しているのに対し、外需の景気敏感銘柄は割安に放置され下値余地が小さくなっています。要するに、景気とマネーの流れという2つの視点で不整合が生じており、判断を難しくしています。

こうした状況で強いて注目業種を挙げるなら、「成長性が高いが割安」と「景気敏感ではない割安」という2つの切り口が考えられます。前者は電機、ハイテク、ITサービスなど、構造的に需要は強いが買われ過ぎていない業種が挙げられるでしょう。後者では建設、不動産、REIT、電力、陸運、空運などになります。

また、弱気相場では高配当の銘柄が着目されやすいので、配当利回りの高い銘柄から選ぶのも手もあるでしょう。

個人投資家はどんな姿勢で臨むべき?

――個人投資家に人気のある新興市場や中小型株はどうですか。2018年のマザーズ市場とJASDAQ市場は下落一辺倒で、損失を被った投資家も少なくなかったようです。

金融緩和で市場にたくさんのお金が流れていた「過剰流動性相場」の恩恵を最も受けてきたのが新興市場で、2013年から2017年までの5年間、一本調子で上昇してきました。この上昇を支えた過剰流動性相場が終わった時、資金がどこから出ていくかを考えれば、当然資金が多く向かった先から逃げていきます。

加えて、5年もかけて上昇した相場の調整が1年で済むとは考えにくく、下落の流れは止まらないでしょう。

もちろん、個別銘柄で見れば、上昇期待の大きい銘柄はありそうです。見極めるポイントの1つに、5年前とのPERの変化があります。

もともと新興銘柄のPERは市場平均より高いもので、そのこと自体は問題ありませんが、5年前と比較して業績や成長期待に劇的な変化がないのに大きく切り上がっている銘柄は「買われ過ぎている」と判断できます。投資するなら、ここ数年のPERに大きな変化がない銘柄の中から選ぶのが、下落余地が少なく無難です。

――個人投資家は2019年の相場に対し、どのような姿勢で向き合っていけばいいでしょうか。

日本株だけでなく世界の金融市場が、これまでの10年とは違うステージに転換しようとしているのですから、これまでと同じ方法で勝ち続けるのは困難です。特にアベノミクス以降に投資を始めた人にとっては、経験したことのない局面がやってくることになります。投資家は気持ちを切り替えて新しい相場に臨み、慎重に戦略を練る必要があるでしょう。