はじめに
所得、教育、不動産……。日本国内のさまざまな領域で進展している感のある“二極化”の様相。その波が、お正月の“顔”とも呼べる、おせち料理にも押し寄せようとしています。
1つ108円(税込み、以下同)の格安おせちが売り上げを伸ばす一方、ネット通販のおせち平均購入単価は上昇。1セット39万円という高額商品も登場しています。二極化が進行しているように映る背景には、どんな事情が潜んでいるのでしょうか。
購入単価は5年で1割アップ
重箱のサイズは縦が76.4センチメートル、横が113.3センチメートル。通常のお重の約23倍という超特大サイズのおせちを売り出したのは、ネット通販大手のアマゾンです。
アマゾンが限定販売した「スーパー超特大おせち」
テレビなどにも出演している林裕人シェフが監修した84品目の料理が、30人前の分量で収められています。価格は39万円。販売数は3セット限定ですが、アマゾン自ら「平成最後の正月にふさわしい、アマゾン市場最大のおせち」と銘打つのもうなずける内容になっています。
もちろん、これは高額おせちの中でも極端な例。ただ一方で、ネット通販大手の楽天市場によると、同サイトにおける10~12月のおせちの平均購入単価は2012年の1万0,446円から2017年は1万1,475円と、5年間で1割上昇しています。
同じ期間で、楽天市場のおせちの売上高は4割も拡大。おせちの高級化が進んでいる状況が浮かび上がってきました。
楽天・ECコンサルティング部の小野由衣シニアマネージャーは「以前は高単価なものは売れないと考え、積極的に仕掛けていませんでした。が、情報をしっかりと打ち出せばユーザーも安心して購入できることがわかり、戦略を切り替えた結果、需要の拡大とともに単価も上がってきました」と振り返ります。
単価上昇に伴う具体的な変化で顕著なのは、おせちの中に入っている品目数の増加だといいます。そのほか、高額商品になるほど、重箱の質感や食材のグレードなどが向上しているそうです。
格安おせちは2年で1.5倍に
こうした高級化の流れの一方で、おせちの定番商品が小分けになっている1パック108円の格安おせちも販売が好調です。
ローソンストア100では、2015年度に60万個程度だった「100円おせち」の販売数が、2017年度には87万個と過去最高の販売を記録。2018年度は95万個と、前期比で1割の販売増を狙っています。
今年は昨年より6品目増やし、28種類の商品を展開。「数の子」「えび甘露煮」などを新たにラインナップに加えました。この100円おせちを10種類程度購入して盛り付ければ、家族3~4人分のおせちプレートが1,080円で用意できる点が売りです。
価格が割安だと、品質面の心配が先に立ちますが、ローソンストア100はこの点でもこだわりを見せています。たとえば、わかさぎなどの佃煮類は形やサイズが不ぞろいな原材料を使用してコストを下げる一方、大正2年創業の老舗に作ってもらうことで味を担保しているそうです。
一見すると、交わることなく並行して進行しているように映る、この2つの流れ。しかしその根底には、共通する1つの大きな潮流がありそうです。