はじめに

伝統的な宗教との決定的な違い

しかしもちろん、インターネットが伝統的な宗教とは異なる面もまた多くあります。

ひとつ決定的なのは、インターネットそのものだけではまだ、人間の「死」や「死後の世界」についての包括的な世界観を、充分な広がりをもって人々に伝えるまでには至っていません。人は死んだらどうなるのか、死後の世界とは何か。こうした問題に自信をもって解答を与えられるのは今でも伝統宗教です(「葬式」仏教にも大いに意義はあるわけです)。

また、すべてがデジタルのコードでプログラムされたネット世界には、宗教的なひらめき、啓示などが入ってくる余地は限りなく小さいと言えるでしょう。

とは言うものの、インターネットが、私たちの生活、生き方、世界観に大きな変動をもたらしていることもまた事実です。

GAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)を頂点とする大小のネット会社は、新たな起業家精神の高まりをもたらしましたし、ITに詳しいコメンテーターが、生活や経営、政治など、あらゆる側面について効率性の観点から語る姿もよく目にします。

旅行、買い物、流通からタクシー手配まで、スマートフォン技術によって世のさまざまな仕組みも再編成されてきています。ペアーズなどのWeb/スマホによるマッチングサービスで恋人や結婚相手を見つけた人も増えています。公共圏から親密圏まで、ITの影響力は甚大です。

また、近年では「サイバー・スピリチュアリティ」なる言い方も出てきました。生き方、人生観、世界観、そして目に見えないつながりの意識を仮にスピリチュアリティ(精神性、霊性)と名付けるならば、インターネットというメディア技術がもたらす新しい精神のあり方は、サイバー・スピリチュアリティとは呼べるのかもしれません。

サイバー・スピリチュアリティをとらえることは、今後10年、20年のあいだの、思想的、社会学的なテーマともなりうるでしょう。


※参照
http://allendowney.blogspot.com/2014/04/the-internet-and-religious-affiliation.html
https://www.facebook.com/zuck/posts/10154944663901634

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