新年早々1月3日の夕刻、熊本県和水(なごみ)町で震度6弱を記録する地震が発生しました。幸いなことに、家屋の損壊などの被害は小さかったものの、九州新幹線が終日運休するなど交通機関の乱れが生じ、新年のUターンラッシュに大きな影響を与えました。

災害を避けられないものとして、先ず人命を守ることを前提とした上で、重要インフラへの被害を最小限にとどめ、社会システムが機能不全に陥るのを回避しようという考え方が公共事業の基本方針に掲げられるようになってきました。

この、災害に対するしなやかな回復力、つまり「レジリエンス」という観点が今とても注目されています。


インフラレジリエンスに国も本腰

2018年度末にも正式な公表が予定されている国土強靭化基本計画の改定案には、レジリエンスという観点に基づいて重点化する施策の見直しが盛り込まれています。

見直しにより新たに重点分野に加わったのは、気候変動の影響を考慮した治水対策や、災害時の代替交通手段として鉄道と道路のネットワーク整備であり、防災・減災対策、災害対応を担う建設技能労働者の確保・育成も盛り込まれました。

現行の国土強靭化基本法より以前には、第1次から第4次まで社会資本整備重点計画が策定されました。社会資本整備重点計画では、来るべき社会資本ストックの老朽化に備えた計画的なインフラの更新目標の設定に重点がありました。

ですが、東日本大震災を機に策定された国土強靭化基本計画では、激甚災害に対する事前の防災・減災対策が重要視されるようになり、さらに最近では災害後の社会システムの迅速な機能回復にも対策の範囲が広げられる見通しです。

リニア中央新幹線や整備新幹線の延伸計画や、東京都・名古屋市・大阪市の3大都市を取り巻く環状道路整備など、大型の新設プロジェクトが活況になっているのも、災害時の避難や救援物資の輸送において重要な役割をもつ高速道路や鉄道網に代替可能手段を講じることが災害からの迅速な復旧に貢献すると考えられるためです。

今後、成長が期待できる企業は?

老朽化インフラの計画的な補修修繕に係る費用は、直近で3.6兆円規模と推計されていますが、老朽化の進行に伴って今後も着実に拡大を続けると予想されます。さらに、万一に備えた代替ルート確保に係るインフラ新設プロジェクトを含めた国土強靭化の市場規模は大きなものになるでしょう。

建設市場のなかの成長分野として、関連企業の業績拡大への寄与が期待されており、補修専業ゼネコンとしての地位が確立されているショーボンドホールディングス(1414、東証1部)は株式市場でも高く評価されています。

今後、補修修繕市場をドライバーに成長が期待される企業として、床版取替工事やニューマチックケーソン工法を得意とするOSJBホールディングス(5912、東証1部)や、災害復旧に欠くことができない法面補強工事などを中心とする特殊土木工事会社のライト工業(1926、東証1部)に注目しています。

インフラの補修補強や防災・減災に係る工事資材の分野では、床版の長寿命化に効果を発揮する高性能防水舗装材料などで特許を持つニチレキ(5011、東証1部)や、新たに重点施策に加わった治水対策工事に関する護岸シートなどニッチ商材を有する前田工繊(7821、東証1部)を挙げます。

2025年の万博開催地に大阪市が決定しました。大阪市では決定前から環状道路整備や万博会場の建設予定地である夢洲への鉄道網の延伸が計画されていましたが、進捗の遅れは否めません。

今後、関西エリアでも大深度地下を利用するシールド工事が本格化する見通しで、ニューマチックケーソン工法の大手の一角を占める大豊建設(1822、東証1部)、道路トンネルの防災設備でトップとの位置づけの能美防災(6744、東証1部)も注目されます。

<文:企業調査部 溝口陽子>