米アマゾンなど大手ITプラットフォーマーによる保険分野への進出が世界的に注目されています。実は中国でも、大手プラットフォーマーのBATJを中心に、保険分野への進出が進んでいます。

BATJとはB:百度(バイドゥ)、A:阿里巴巴(アリババ)、T:騰訊(テンセント)、J:京東(ジンドン)という4社を指しています。特に2013年、アリババとテンセントが事業の垣根を越えて衆安保険を設立以降、その勢いは加速しています。背景にはどんな事情があるのでしょうか。


苦戦する百度、後発追い上げの京東

アリババ、テンセントは傘下の金融子会社を中心に出資や買収を積極的に行い、生保・損保の両分野に加えて、代理店の許可も取得しています。

生保分野については、アリババ傘下のアントフィナンシャル、天弘ファンドなどが相互保険会社である信美人寿相互保険を設立しています。アントフィナンシャルは損保分野において、ネット専業の衆安保険以外に、国泰財産保険にも出資しています。テンセントは傘下のIT企業を通じて生命保険会社である和泰人寿に、損保は衆安保険に出資しています。

一方、苦戦しているのは百度です。同社は2015年に独アリアンツの中国法人とのネット専業損保の設立意向を表明しましたが、その後設立許可は発表されていません。

2016年には、中国太平洋財産保険と傘下の百度鵬寰資産管理で損害保険会社の設立意向を発表しました。しかし、2018年10月には、両社の設立に向けた提携を終了する旨を発表しています。設立の申請はしたものの、なかなか許可が下りていないようです。

その百度の動きを横目に、後発で追い上げているのが京東です。

中国でのEC売り上げで第2位の同社は、2018年4月にアリアンツの中国法人(損保)へ30%の出資を実現させ、第2位の株主となりました。京東側はアリアンツが長年蓄積した保険に関するノウハウを活用することができ、アリアンツ側は京東が保有する3億人のビッグデータを活用することも可能です。

プラットフォーマー系生保元年の実情

中国におけるプラットフォーマーは全体的にみて損保分野への進出や検討が進んでおり、生保分野は現時点で信美人寿相互保険(アリババ)、和泰人寿(テンセント)の2社のみとなっています。では実際のところ、アリババ系の信美人寿の経営状況はどうなっているのでしょうか。

ネット販売を中心としたプラットフォーマー系の相互保険会社である信美人寿は、初年度である2017年の収入保険料が4億7,404万元となりました。生保84社のうち67位で、中国の生保市場全体でみると1%にも満たない状態です。ただし、2017年5月に開業後わずか半年ほどであるということを考えると、善戦しているといえるでしょう。

信美人寿は、発起会員会社であるアントフィナンシャルとの連携を強めています。アリペイなどネット決済を活用し、手続きがスマホで簡単にできる相互保険商品を提供しています。

団体保険という形をとりながら、発起会員会社やその従業員・親族など、対象を特定したうえでの保障提供を行っています。売れ筋の商品をみると、上位3商品は団体養老保険、年金保険、団体年金保険と貯蓄性保険が中心となっています。

信美人寿の2017年の経営状況を降り返ってみると、営業収入の総額は5億0,618万元で、そのうち保険料収入が93.7%を占めました。2017年の営業支出は6億7,481億元で、そのうち責任準備金が64.0%、事業費が35.7%。最終的な純利益は1億6,893億元の赤字となっています。

巨大経済圏における保険事業の意義

このように、中国のプラットフォーマー系生保の信美人寿は、保険経営における販売チャネル、運用、決済に至るまで、アリババ経済圏が保有するツールや資源を活用し、顧客を経済圏内に囲い込んでいることがわかります。

保険事業は、保険料というキャッシュと、疾病など健康に関する精度の高いビッグデータが集中する事業でもあります。日本でも、楽天などのEC系、auなど通信系、LINEなどSNS系のプラットフォーマーが保険の取り扱いをしていますが、そのキャッシュと健康ビッグデータを経済圏内にとどめるという中国プラットフォーマー系生保の事業モデルは、日本のそれとは大きく異なる特徴を持っているといえるでしょう。

<写真:ロイター/アフロ>