はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は横山光昭氏がお答えします。

私には3人の子供がいますが、長男、長女はすでに独立し、今年やっと末の子が独り立ちします。ようやく自分たちのためにお金を貯められそうです。夫の定年まではあと10年。老後資金を作ることはできるでしょうか。今の貯蓄は150万円しかないので、少々焦っています。


これまで毎月家計はぎりぎりで月々からは貯蓄できませんでしたが、ボーナスの大半は貯蓄してきました。ですが、長男と長女の大学の在学期間が重なったときに2人分の学費を負担するのが大変だったので、長男に奨学金を借りてもらい、それを一括返済したため貯蓄が減ってしまいました。また、次男は一浪して大学に入学しました。そのため予定以上に支出が増え、長女の授業料との重複がきつく、教育ローンを利用しました。今も返済を続けています。


今後は、自分たちの老後資金はもちろんですが、長男夫婦に子供が生まれた時に、孫にかけてあげるお金も作りたいですし、長女、次男の結婚式の時に多少援助できるお金も作っておきたいと考えています。そのために、これから私たち夫婦ができることを知りたいと思っています。どうしたら節約できるのかを一緒に考えてください。


〈相談者プロフィール〉
・女性、49歳、既婚(夫:50歳・会社員)
・子供(3人):長男27歳(既婚・別居)、長女25歳(独立)、次男23歳(独立)
・職業:パート
・手取り世帯月収:42.1万円
 夫:35.4万円
 妻:6.7万円 
・手取り年間ボーナス:130万円(夫)
・預貯金:約150万円


【支出の内訳(37.6万円)】
・住居費:10.4万円
(ローン残期間:約10年、ボーナス払いなし)
・食費:7.2万円
(外食、総菜、ネットスーパーの利用が多い)
・水道光熱費:2.5万円
・通信費:1.3万円
・生命保険料:3.6万円
(保障内容がよくわからない)
・日用品代:0.6万円
・医療費:1.6万円
・小遣い:夫3.5万円
・教育ローンの返済:3.5万円
・その他:3.4万円


横山: 定年まであと10年。老後資金の準備ができなかったのですね。現状で毎月の貯蓄可能額は4.5万円。お子さんの独立に合わせ支出を見直すと、もっと貯蓄は増やせそうです。ただ、世帯収入が少ないわけではないのに、貯蓄があまりできていなかったことは少々残念です。

子供が独立したら生活費の圧縮を

食費、水道光熱費がご夫婦二人暮らしであるわりに高めな印象です。ここを少し絞ってみましょう。特に食費は、年齢が上がるとともに食事の質にこだわったり、外食や買ってきたお総菜で済まそうとしがちになりますので、一度どういうものにお金を支払っているのか、記録をとってみるとよいでしょう。

現状でも外食、総菜、ネットスーパーが多いと自覚していらっしゃいます。では、その外食の頻度はどの程度か、総菜はどういったものをどのような頻度で買っているのか、ネットスーパーでは、ムダな買い物をしていないのか、一度しっかり把握したほうがよいでしょう。利用してはダメだと言いたいのではありません。利用の仕方を検討し、回数を決める、間隔をあけるなどができれば、支出の削減につながると思うのです。ご自分で思っていたよりも使っていたと思うところがあれば、それを改めるとよいでしょう。まずは、食費について、どういったものを、どういった頻度で買っているのかを把握し、それが適正なのかを考えてみてください。

水道光熱費についても、ご夫婦の使い方を改めてみましょう。食器洗いをするときに水を流しっぱなしにしている、人がいない部屋も電気をつけっぱなしにしている、入浴時にはシャワーを流しっぱなしにしているなどはないでしょうか。もし、ムダに使っているところが思い当たらない、見つからないという場合は、電気をよくつける部屋をLED電球に変えたり、節水シャワーヘッドを使ってみたりしてもよいでしょう。もしかすると、器具や部品を交換するだけで比較的簡単に水道光熱費を下げられるかもしれません。それらを調べてみて、利用してみるのもよいと思います。

食費も水道光熱費も、無理に使い方を変えるとイヤになってしまうので、大きな変化は少なく、かつ節約できる方法を検討してみましょう。

保険はライフステージに合わせて見直しが必要

現在の生命保険は、保険料が少々高いように思います。お子さんを養育する期間は終わりましたので、保障の内容をご夫婦二人暮らしに適切なものに見直してもよいでしょう。

お子さんが独立されたら、基本的には死亡保障は薄くして構わないと思います。ご主人がもし、先に亡くなったとき、そのあとの奥様の生活が困らないように、遺族年金のほかにいくらあると暮らせるかを計算し、必要な保障額を検討してもよいでしょう。貯蓄がしっかりあれば、死亡保障はいらない場合もあるのですが、相談者さんご夫婦は貯蓄が少ないので、最低限の死亡保障は考えておいてもよいと思います。

医療保障は見直しに注意が必要です。今、なにかしらのご病気で病院にかかられているのか、医療費が高めに記録されています。もし、ご病気があるのなら、新たな医療保障に入ることができない可能性があります。今の保障をベースに、状況に合わせて見直しをするようにしましょう。

家族構成が変わると、保険も必要な保障が異なってきます。ライフステージに合わせた見直しをすることで、生命保険料を抑えられる場合がありますので、現在の保障内容をしっかり把握したうえで、もしくは保険証券を持って、中立な立場でアドバイスしてくれるところに相談をしてみてもよいと思います。

教育費にお金がかかり、老後資金の準備ができない夫婦が増加中?

相談者さんが経験されてきたように、お子さんの教育費にお金をかけて、老後資金が準備できていないというご相談は増えています。相談者さんご夫婦はまだ10年の猶予がありますが、晩婚・晩産傾向にある今、定年間近で焦っているご夫婦も珍しくありません。教育費がかかる時期に老後資金を貯めなくてはいけない状況であるケースも多く、現代の家計の大きな問題となっています。

「教育費はすべて親が負担する」そう思い込んでいる方は少なくありません。教育費が一番重たくなる時期と、自分の収入が一番多くなる時期が重なることで、支払うことが可能だからと、つい、当たり前という気持ちで過大な教育費をかけてしまいがちになるのです。寿命が伸び、人生100年時代といわれるようになった今、老後生活が長期化し、老後資金の必要額も増えています。老々介護が問題になるように、教育費、老後資金の問題だけではなく、自分たちの親の介護費という問題も生じてくるかもしれません。そうなると、家計はますますひっ迫します。

将来を見据え、時には子供を巻き込みながら、自分たちの老後資金をしっかり準備してほしいと思います。それが、老後に子供や周囲の人に迷惑をかけない生き方をするための準備でもあるのです。

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