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波乱要因目白押し、どうなる?2019年のアジア株式市場

5つのポイントを解説

2019年の金融市場は、米アップルの業績が悪化したことに端を発したアップル・ショックや、米国の景気減速懸念などを背景に、先進国のハイテク株を中心に大きく下落し、円高が急伸するなど、波乱の幕開けとなりました。

足元は落ち着きを取り戻しつつあるものの、引き続き難しい相場展開が予想されるなかで、今回は今年のアジア新興国株式市場の見通しについて考えてみたいと思います。

ポイントを5つ挙げるとすれば、(1)米中問題、(2)欧州問題、(3)タイ総選挙、(4)インドネシア大統領選挙、(5)インド総選挙です。


米中問題は「貿易戦争」から「覇権戦争」へ

まず米中問題についてですが、米中貿易戦争は、アジア新興国にとって中国からの生産ラインの移転などが見込まれるため、むしろプラスとの見方もできます。しかしそれも程度の問題であって、米国の行き過ぎた内向き志向は世界の貿易縮小を招くほか、中国経済が大きく減速すれば、近年、中国向け輸出を拡大してきたアジア新興国の輸出産業に影響が及ぶ可能性があり看過できません。

現時点では、これまで米国が打ち出した制裁関税の対象製品の占める割合は、中国の米国向け輸出額の1割にとどまっており、仮にそれら製品の輸出が半減しても、中国の米国向け輸出に対するインパクトはリーマンショック時の4分の1程度と限定的です。

しかし、カナダでの中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長逮捕や、世界で進む中国製通信機器の排除の動きなどを見ると、米中問題は「貿易戦争」から「覇権戦争」へと転じつつあります。

状況はより複雑化しているため、引き続き両国の動向を注意深く見守る必要があるでしょう。

混迷を極める各国情勢

次に欧州問題については、1月に発効を控え混沌としている英国のEU離脱問題や、イタリアの財政赤字問題、ポピュリズム勢力の躍進が予想される5月の欧州議会選挙、昨年末に量的金融緩和策を終了した欧州中央銀行(ECB)の利上げ開始時期など、欧州では火種がくすぶっています。これらは、世界の金融市場において十分に織り込まれているとは言えず、今後波乱要因となる可能性がありそうです。

残る3つはアジア各国で控える選挙です。アジア新興国は政治の季節を迎えており、今年から来年にかけて大規模な選挙が予定されています。なかでも今年注目されるのは、2月のタイ総選挙、4月のインドネシア大統領選挙、4~5月のインド総選挙です。

タイでは、2014年のクーデター以降、軍部が政権を握っており、2月に民政移管に向けた総選挙が予定されています。しかし、この総選挙は当初2015年に実施される予定だったもので、度々延期されてきました。今回も実施されるのか未だに不透明ですが、タイ政治経済の節目となる可能性があり注目されます。

現在、選挙キャンペーン真っ只中のインドネシア大統領選挙は、現職のジョコ大統領と、前回2014年の選挙でもジョコ大統領と激戦を繰り広げたプラボウォ氏の一騎打ちとなっています。現時点で5割程度の支持率を維持するジョコ大統領が優勢と思われますが、過去を振り返ると、インドネシアの選挙は接戦となるケースが多く、結果は蓋を開けるまでわかりません。

ただ、ジョコ大統領は5年間の成果実現のため、足元インフラ投資を加速させており、短期的な景気の下支えが期待できるほか、両候補の経済政策に大差はないため、中期的にも大統領選挙は大きな波乱要因にはならないと見ています。

インド総選挙については、国政与党のインド人民党(BJP)が前哨戦に位置付けられていた昨年の地方選挙で苦戦を強いられ、モディ首相の再選に黄信号が灯っています。インドはモディ政権による経済政策「モディノミクス」の効果から7%台の経済成長を維持していますが、好景気の恩恵は一部の都市部にとどまり、農村部で不満が噴出しています。

一方で、2014年以降、「モディノミクス」が海外資金を呼び込んできたといっても過言ではないため、政権交代となればインド経済への影響も不可避と考えられ、選挙戦の行方が注目されます。

株価の値動きはどうなる?

世界の株式市場は先行き不透明な材料を多く抱えるなかで、ボラティリティの大きい値動きとなっていますが、アジア新興国株式市場については、年前半は比較的堅調な値動きが予想されます。

国別では、長期的には経済成長の余地が大きなベトナム、中期的にはこれまで長期間に亘って海外資金の流出傾向が続いていたインドネシアとフィリピンが底堅く推移しそうです。

また、中国は景気減速が鮮明となるなかで、企業業績が悪化する可能性がありますが、株式相場はすでに織り込みつつあると考えています。緩和的な金融政策のなか、政府による大規模減税や財政出動などの景気刺激策を追い風に底入れが期待できそうです。

最後にもう1つ、実は大阪在住の筆者が最も注目しているキーワードは、6月に控える「G20(20ヵ国・地域)大阪サミット」です。日本で初めての開催、かつ日本が主催するサミットとしても過去最大規模となる今回は、不安定化する世界経済を背景に議長国として難しい舵取りが予想されています。

そのようななか、先日、英誌エコノミストによる「世界で最も住みやすい都市」ランキングで3位に大躍進した大阪が、さらに世界に向けて存在感を放つことができるのか、期待を込めて見守りたいと思います。

<文:市場情報部 北野ちぐさ>

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