はじめに
2019年は年初から、株価などのマーケットが波乱の展開となりました。1月3日の朝の一時1ドル=104円台の円高というフラッシュクラッシュ(瞬間暴落)に代表されるように、年末年始は円高ドル安方向にドル円レートは動きました。
直近12月時点では、エコノミストが懸念する景気腰折れの2大懸念材料は「保護主義の高まり」と「中国景気の悪化」でした。しかしここに来て、昨年前半で最大の懸念材料だった「円高」を挙げる人が再び増加してきました。
実は、最近のこうした動きは“誰でも作成できる意外な先行指標”が12月前半に示唆していました。この先行指標を含めた身近なデータを分析することで、まだマクロ統計に現れていない、足元の景気基調を探ってみたいと思います。
12月に再浮上した“ある懸念要因”
オールジャパンのエコノミスト約40名を対象とする「ESPフォーキャスト調査」では、2017年6月以降、偶数月に「半年から1年後にかけて景気上昇を抑える(あるいは景気を反転させる)可能性がある要因」を特別調査と実施しています。フォーキャスターに11項目プラス自由回答枠の中から、1人当たり3つまで選択してもらっているのです。
なお、自由回答で11項目以外の要因が多くのフォーキャスターから指摘されたことは、これまで一度もありません。消費増税実施が「半年から1年後にかけて」の範囲内に入った2018年12月調査でも、自由回答を含め国内要因で2ケタになった項目はない状況です。
2018年12月調査での第1位は「保護主義の高まり」と「中国景気の悪化」で、ともに30人でした。同年2月調査では「保護主義の高まり」は4人でしたが、ドナルド・トランプ米大統領が鉄鋼・アルミ関税の引き上げに言及した直後の調査である同年4月調査で20人に跳ね上がり、12月調査では30人になりました。
これは2018年になって注目度が急上昇した要因です。かつて景気腰折れ懸念材料のトップクラスで2018年2月調査、4月調査、6月調査の3回で第1位だったのは「円高」でした。同年6月調査の24人まで20人台でしたが、同年10月調査では9人と初の1ケタ台に低下しました。しかし、同年12月調査では14人と、再び2ケタ台に上昇してきました。
「円高超」の記事数差が示唆した円高
この年末年始には、1ドル=110円台前半から100円台へとドル円レートの水準が円高方向にシフトしました。一時的とはいえ、日本の年末年始休暇の最終日であった1月3日の朝に、豪州市場で短期的に4%も動き、1ドル=104円台をつけるという、いわゆるフラッシュクラッシュが起きました。その後は1ドル=108円程度で安定的に推移しています。
実は、最近のドル円レート動きを示唆していた先行指標があります。「日本経済新聞の円安の記事と円高の記事の記事数差」です。
上図のように、半月ごとに日本経済新聞の円安の記事数にドル高の記事数を加えたものから、円高の記事数とドル安の記事数を引いた、「円安-円高」記事数差をつくると、ドル円レートに若干先行する傾向があります。市場関係者の相場見通しなどが先行する要因になるのではないかと考えられます。