はじめに

「世界中の青空を全部東京に持ってきてしまったようなすばらしい秋日和でございます」。1964年10月10日。NHKの北出清五郎アナウンサーの名調子で東京五輪開会式のテレビ中継が始まりました。会場となった国立競技場のスタンドは約7万5,000の大観衆で埋め尽くされました。

あれから半世紀余りを経て、東京は2度目の五輪を迎えようとしています。日本の株式市場でも東京五輪関連銘柄の動向に注目が集まっています。建設、警備、スポーツ用品、フィットネスなど特需への期待が膨らむ業界は少なくありません。

一方、2020年の五輪・パラリンピックに先駆けて開催されるものの、五輪に比べると株式市場で経済効果がまだ十分に織り込まれていないとみられるのが、ラグビーのワールドカップ(W杯)です。


チケットの売れ行きは順調

ラグビーW杯は、今年9月20日の日本対ロシア戦を皮切りに、全国12都市の会場で計48試合が行われます。ラグビーのW杯が欧州と南半球以外の国で開かれるのは、これが初めてです。

20ヵ国が参加して5ヵ国ずつ4つのプールに分かれ予選を戦い、各プールで2位までに入ったチームが決勝トーナメントへ駒を進めます。日本はロシアをはじめ、アイルランド、スコットランド、サモアと同じ「プールA」に入ります。

2015年のイングランド大会では日本代表が世界の強豪国の一角、南アフリカを撃破。今回は地元開催とあって、ファンの期待が高まっています。筆者も学生時代、強豪とはいえない大学でしたが体育会に所属して楕円球を追いかけていたこともあって、日本代表の活躍を願う1人です。

チケットの売れ行きは極めて順調。180万枚の予定分のうち、販売実績はすでに100万枚を超えた模様です。それに比べると、株式相場の反応は今一つのような気もしますが、むしろ株価に織り込まれていない分、「意外高」の展開がなきにしもあらず、かもしれません。

インバウンド40万人超が日本全国に

実際、経済効果も決して小さくはなさそうです。ラグビーW杯が他の大きなスポーツイベントと異なるのは開催期間が長いこと。今年のW杯は9月20日の開幕戦から11月2日の決勝戦まで44日間です。ラグビーW杯では通常、選手の疲労などを考慮し、試合の間隔が長めに設定されています。2020年開催の東京五輪(17日間)に比べると、2.5倍の長さです。

となると、ラグビーの応援に訪れた外国人客が観光などにもお金を振り向ける「インバウンド消費」を取り込もうという動きも活発化しそうです。前回のイングランド大会では、海外からの観戦客が42万人程度に達しました。日本大会でも40万人超の外国人客の観戦が見込まれています。

九州各県の知事や経済団体のトップなどが2018年7月、フランスを訪れて観光キャンペーンなどを行って「九州」をPRしました。この行脚には同国のラグビーファンが長期にわたって滞在することを見据え、スタジアムだけでなく九州の観光地などにも足を運んでもらおうとの狙いがあったのです。

ラグビーの強豪国として知られるフランスは「プールC」に所属。予選4試合のうち、10月2日に福岡・博多、同月6日に熊本と、九州の会場でのゲームが2つ組まれています。「プールC」に入ったチームが決勝へ進出すると、10月19、20両日に行われる準々決勝の舞台は1位、2位いずれのチームでも大分です。

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