はじめに

主要プランで3ヵ月半額キャンペーン

もちろん、26歳以上の世代向けにもキャンペーンは用意しています。

イオンモバイルの契約者全体の約55%を占める4GB、6GB、8GBのプランを対象に、基本料金を3ヵ月間、半額にするキャンペーンを実施。これは3年学割の利用者も対象になるため、25歳以下の利用者には相当おトクな状況となりそうです。

「格安スマホを試してみたかった人に試してもらいたい」。イオンモバイルの井関事業部長は、こう狙いを語ります。

さらに、新規契約と同時に「10分かけ放題」サービスに加入すると、31日間、かけ放題オプションの基本料金が無料になるキャンペーンも展開します。加えて、音楽や動画が楽しめる「music. jp」や、留守電を読んで確認できる「スマート留守電」も、最大3ヵ月無料で提供します。

イオンが大盤振る舞いする狙い

MVNO参入3周年の記念とはいえ、イオンモバイルがここまで大盤振る舞いをする狙いはどこにあるのでしょうか。

イオングループは現在、「通信」「金融」「ポイント」の3事業を核とする「イオン経済圏」の確立を進めています。これら3事業を利用している顧客を“ロイヤリティ顧客”と位置づけ、育成・増加させていきたい考えです。そのトリガーの1つとして、イオンモバイルは大きな期待と責任を担っているわけです。


イオンが掲げる独自の経済圏構想

イオンモバイルの契約回線数は、MVNO参入から3年で50万を突破しました(2019年1月末)。MM総研の調べによると、2018年9月末時点の国内の独自サービス型SIMの回線契約数は1202.7万。調査時点は異なりますが、イオンモバイルの国内シェアは約4%と推定されます。


MVNO参入から3年で50万回線を突破

MM総研の同じ調査では、楽天がシェア15.6%でトップ。「IIJmio」を展開するインターネットイニシアティブが13.2%、UQコミュニケーションズが11.3%と続きますので、まだ大手3社との間には距離があります。しかし、井関事業部長は「規模はまだまだですが、顧客の中身が特徴的」だと胸を張ります。

イオンモバイルにMNP(携帯電話番号ポータビリティ)で転入してきた利用者の解約率は0.72%。同社は契約期間の縛りや契約解約金などを設けていない点が特長の1つですが、「契約の縛りを入れている他の業者と比べても、解約率は大差のない数字。満足していただけている証拠」と井関事業部長は分析します。


MNP転入回線の解約率は0.72%と、契約縛りのある事業者と遜色ない水準

利用客がサービスやプランに関する疑問や質問、アフターサービスを頼みたい時、全国のイオンの店頭で対応してくれるのが、イオンモバイルの別の特長。顧客の獲得経路でも、50万回線のうち実に94%にあたる47万回線が店舗経由だといいます。

このようなイオンの店舗網を接点にした、ロイヤリティの高い顧客を抱えていることが、他のMVNOにはない、イオンモバイルの強みというわけです。今回の春得キャンペーンでは、こうした戦略に拍車をかけたい考えが垣間見えます。

WAONでの料金支払いも開発へ

井関事業部長は、今後の目標として「2021年までに100万回線達成」を掲げます。

参入当初と比べて、直近で伸びている客層が20~30代と60代以上。今回の春得キャンペーンでは若年層を押さえにいった形ですが、次のターゲットに据えているのはシニア層です。実際、偶数月の年金支給日にイオンのケータイ売り場に足を運ぶシニア層が増えているとのこと。彼らに照準を絞り、年間で施策を打っていく構えです。

さらに、東京オリンピックの開催を来年に控え、今後も増えていきそうな外国人観光客にも対応したい意向。プリペイド式のスマホ販売を検討しているといいます。ほかにも、顧客から要望が多い、電子マネー「WAON」による支払いも、開発を進めているそうです。

競合他社の動きに加えて、10月には消費増税も控えており、消費者の生活防衛意識が強まることも想定される2019年。ですが、井関事業部長は「事業環境が変わる中で、お客様が自分の通信料金やスマホの契約が今のままでいいのか、考えるきっかけになる」と前向きです。

そのうえで、「イオンスマホがデビューした2014年も増税の年。2019年も飛躍の年にしたい」と意気込みます。店頭で直接顧客の声が聞けるアドバンテージを生かして、競合の上を行く新サービスを導入していけるか。その成否は、モバイルが一翼を担うイオン経済圏の将来にも影響を与えそうです。

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