はじめに

3月になると、各地で採用説明会が行われるなど、企業の採用活動が本格化します。私自身も採用の面接官を行うことがありますが、限られた時間の中で企業側も学生側もお互いを理解し、意思決定を行う重要な場面です。

しかし、どうしても面接する側も、される側も、感情を持った人間同士。馬が合う・合わないという“相性”の問題が否応なく発生します。

もしカウンターパートにいる相手が相性の良くない人物だった場合、あなたはどのように対処すれば良いのでしょうか。面接官と応募者、それぞれにとって役に立つ理論をご紹介したいと思います。


人柄や熱意がモノを言う採用現場

リクルートキャリアがまとめた『就職白書2018』によれば、「企業を選ぶときに最も重視した条件」について、就職活動を開始した当初と活動後の差を見ると、「一緒に働きたいと思える人がいるかどうか」が最も増えているという結果になりました。

同調査で「企業が採用基準で重視する項目」で最も高かったのは「人柄」(92.1%)、次いで「熱意」(77.6%)となっています。このデータからも、面接時のお互いの印象が重要であることがわかります。

しかしながら、相手の印象は客観的な指標が置きづらい項目でもあります。人柄が良いかどうかを客観的な項目として示すのは難易度が高く、面接官や応募者によってもとらえ方が異なります。

たとえば、応募者サイドでは、「自分の話を聞いて共感してくれる人だと緊張しないで済む」とか、「質問したいことをズバっと聞いてくれるほうがありがたい」など、自分が面接をしやすいと思う面接官のタイプが異なることがあります。

同じ相手でも評価が異なることは多い

反対に、面接官サイドでは、同じ応募者の面接に同席した面接官たちの評価が異なることもあります。

たとえば、面接官Aさんは「やりたいことはいろいろ語っているけど、あまり熱意が感じられない」と評価したのに対し、面接官Bさんは「大人しいけど、具体的にやりたいことを語っていて実は熱意を持っていそうだ」と、異なる評価をするようなケースです。

このようなケースでは、Aさんは「熱意があれば、何らかが話し方に表現されるはずだ」、Bさんには「熱意があれば、具体的な考えを持っているはずだ」と、相手に対するコミュニケーションの前提が異なっている可能性があります。

このように、同じ相手を見ても評価が異なることは多々あります。「たまたま相性が悪かった」と片付けてしまうこともできますが、人生にも影響のある就職活動のシーンや有能な人材を確保する企業としての重要業務としてとらえると、改善できるに越したことはないでしょう。

そこで「ソーシャルスタイル理論」というコミュニケーションの理論を使って、面接官と応募者のタイプによるコミュニケーションを考えてみたいと思います。面接官にとっても応募者にとっても、お互いのことを理解し合うことで「相性問題」を解決できるかもしれません。

ソーシャルスタイル理論とはどんなもの?

今回ご紹介する内容は、個々人のコミュニケーションのタイプにより、心地良いと感じるコミュニケーションのタイプを判別する方法です。

この理論を理解し、タイプに応じた対応することで、相手とのコミュニケーションの質を向上させることができます。言い方を変えれば、どのような相手でも「相性が良い」と感じてもらうためのスキルというわけです。

1970年代、米国のデイビッド・メリル博士らが提唱した「ソーシャルスタイル理論」により、人は4つのタイプに分けられることが明らかになりました。この4つのタイプの行動パターンを知り、それぞれのタイプに合った対応をすることで、円滑なコミュニケーションが図れるのです。

ソーシャルスタイル理論では、人の性格がある特徴的な行動に表れることを発見し、行動傾向から個々人に対しての適切なコミュニケーションの方法を把握します。相手の言動に関して、「感情を表す/抑える」と「意見を主張する/聞く」の2つの観点から相手を4つのタイプに分類し、タイプごとに好ましいコミュニケーションをとるという手順です。

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