はじめに

前回、「事業が上手く行って会社の資産が増えると、株式の価値が上がる。これを反映して株価が上がる」と書きました。

株価を読もうと思えば、まず株式の価値を知ることが大切なのです。

今回はこの「株式の価値」について、もう少し詳しくお話ししましょう。


会社の財産が株式の価値

株式は元々、会社を創る時に出資した資金です。その資金で色々なものを買い、それが会社の財産となります。ですからまず、会社の持っている財産の価値が、株式の価値となります。

それは工場の機械設備やビルなどの建物であったり、調達した原材料や製造した商品の在庫であったりするでしょう。一部は現預金のままかもしれません。

これら、会社の財産の全体は「総資産」ですが、もし借り入れをしていれば、総資産からその分を除いた「純資産」の価値が株式の価値ということになります。

この会社の事業が上手くいって、利益が出たとしましょう。その利益は会社の財産です。ですから「純資産」に加わって、株主のものとなります。当然、株式の価値も増えます。

この時もし事業が上手くいかず、損失が出てしまったら、純資産も減ってしまうので、株式の価値も減ることになるのです。

さて、事業が上手くいって手に入った利益ですが、配当金として株主に配ってもよいし、配らずにとっておいて、後で会社のために使ってもよいのです。どちらにしても、株主のものであることに違いはありません。

ただ、配当金として配ってしまえば、その後は会社に残らないので、その分の価値は減ることになります。

ここまでが、株式の「今見えている価値」です。繰り返しますと、「会社の資産全体から借入を除いたもの」、それに稼いだ利益が加わります。

でも、今見えているものだけが価値、というわけではありませんよね?同じ額の資産を持っていても、たくさん利益を生むことができる会社と、そうではない会社とでは、当然会社の価値は違います。

利益を生む力が株式の価値

たとえば、1株当たり100円の純資産を持つA社とB社があるとしましょう。A社の年間の利益が1株当たり10円であるのに対し、B社は20円の利益を上げているとしたらどうでしょう。同じ100円の純資産でも、10円を生むA社より、20円を生むB社の純資産のほうが、当然高く評価されます。

これを%で表すと、同じ100円の出資に対し、A社は10%、B社は20%の利益を上げることができる、ということになります。

これが「ROE(Return On Equity)」と言われる指標です。日本語で言えば「自己資本利益率」ですが、「ROE」として数年前から広く知られるようになりました。

アベノミクスが始まって以降、その成長戦略の一つとして打ち出された中に、「ROE重視の経営」が含まれていたからです。

日本企業は以前から、他の先進国の企業に比べてこのROEが低いと言われてきました。同じだけの出資をしても、他の国の企業よりも稼ぐ利益が少ない、別の言い方をすると「資本効率が悪い」というわけです。

日本の経済の低迷が続いているのはそのせいではないのか、ということで、成長戦略の中に「ROEを重視する」という視点が盛り込まれたのです。

話が少しそれましたが、そういうわけでROEという指標は、企業の稼ぐ力を示す指標として重視されるのです。効率よく利益を上げることができれば、株主は高い配当を得ることやどんどん会社の資産が成長することを期待できるからです。

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