はじめに

花粉症対策苗木の生産量は増加。ただし、普通の苗はその3倍も生産

スギは、二酸化炭素を大量に吸収するほか、材木として加工がしやすく、成長スピードも速いため、これまで積極的に植林されてきました。

現在、日本の国土面積の約7割を森林が占め、森林面積の4割が人工林です。スギ人工林は、448万ヘクタールと、人工林面積の約4割(森林面積の約2割)を占めています。

花粉が生産されるのは、樹齢30年程度以上と言われていますが、現在、スギ人工林のおよそ9割が樹齢30年以上となっており、花粉を放出しています。

花粉症の対策として、林野庁では花粉症対策苗木に植え替えを進めているのですが、スギ苗木の生産量全体のうち、花粉症対策スギ苗木は2016年に25%と低いものとなっています。つまり、花粉症対策スギ苗木の3倍、対策されていない苗木が植えられているのです。

今のペースでは、448万ヘクタールのスギの人工林のうち、年間3000ヘクタール弱しか賄えないとのことです(2019年2月11日 日経新聞)。

グラフ1
(注) 2016年は暫定値
(資料)林野庁「花粉症対策苗木生産量について」

植え替え以外の対策に期待

林野庁による「スギ花粉発生源対策推進方針(2018年)」では、2032年度までに、この割合を7割にまで増加させることを目標としています。しかし、残念ながら、これでは、花粉症への効果をすぐには期待できそうにありません。

植え替えが進まない背景に、安価な輸入材木の増加や他の素材の利用増加にともなって当初の予想どおりに伐採が進まず放置されていることや、花粉症対策スギ苗木の供給不足等が指摘されています。

林野庁では、スギの伐採・利用促進や、苗の供給体制の見直しのほか、スギの雄花だけを枯死させる菌類を使って花粉を抑制する技術の開発が行われています。また、森林の大多数を占める民有林の中には、充分に管理しきれていないものもあることから、4月には「森林経営管理制度」が施行され、適切な管理を目指すとのことです。

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