はじめに

昨年は大阪北部で発生した震度6弱の強い地震、西日本豪雨、北海道地震など、大規模な自然災害による被害が相次ぎました。被害を受けた空港や河川、病院、電力などの重要なインフラを補修するために、政府は2018年度から2020年度までの3年間で3兆円を超す対策を行う方針を固め、2019年4月から始まる2019年度の当初予算ベースの公共事業関係費は前年度と比べて16%増の6.9兆円と10年振りの高い水準に増加しています。

今回は2019年度に拡大する公共投資で重点が置かれる国土強靭化政策と関連企業をご紹介します。


国土強靭化政策が中期的に推進される可能性は高い

国土強靭化政策とは、今後起こりうる地震や津波、火山噴火、異常気象等の自然災害に対して平時から備えを行い、防災や減災を図ろうとする政府の主要政策のことです。いかなる災害が発生しようとも、とにかく人命を守り、経済社会への被害が致命的なものにならないように迅速に回復する「強さとしなやかさ」を持った国土や経済社会システムを平時から構築しておくことが重要という考え方が背景にあります。

当初予算の公共事業関係費の推移

日本は、その地理的、地質的特性から、度重なる大規模自然災害によって様々な被害がもたらされてきました。直近2月21日夜にも、北海道で最大震度6弱を観測する地震が発生しており、将来的には南海トラフ地震、首都直下地震等が発生する可能性が指摘されています。地震以外でも近年、気候変動の影響等により水災害、土砂災害が全国で多発しています。

加えて、国内のインフラは1964年の東京オリンピックの頃に整備された首都高速1号線をはじめ、高度経済成長期以降に整備された道路橋、トンネル、河川、下水道、港湾等でインフラの老朽化が進んでおり、今後15年間では建設後50年以上となる施設の割合が加速度的に高くなると見られています。

日本で発生した自然災害と建設後50年以上と経過する社会資本の割合

このような環境においては、ひとたび大規模な自然災害が発生すれば、国土の広範囲に甚大な被害をもたらすことになります。自然災害やインフラの老朽化による被害を最小限に抑え、安心・安全な国づくりを行うためにも国土強靭化政策が中期的に行われる可能性は高いと言えそうです。

様々な防災関連企業に追い風

国土強靭化政策の内容は、住宅、学校、病院、鉄道、橋梁等の耐震化、河川や海岸堤防の整備、災害に強い情報通信システム、交通・物流施設、電力・上下水道・ガス設備等の構築、公共・金融システムのバックアップ機能の確保など多岐にわたります。国家強靭化政策の推進は、様々な防災関連企業にとって追い風になりそうです。

個別銘柄では、大成建設(1801・東証1部)や大林組(1802・東証1部)などの大手ゼネコンのほか、橋梁・トンネル・道路の補修工事を行うショーボンドホールディングス(1414・東証1部)、建設機械のコマツ(6301・東証1部)、北海道に本社を置く建機レンタルのカナモト(9678・東証1部)、河川・道路補強を行う前田道路(7821・東証1部)、無電柱化などで実績を持つ協和エクシオ(1951・東証1部)、コンクリート橋梁工事のピーエス三菱(1871・東証1部)、セメントの太平洋セメント(5233・東証1部)や住友大阪セメント(5232・東証1部)、地質調査を行う応用地質(9755・東証1部)等に注目しています。

<文:投資調査部 川崎朝映>

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