はじめに
「各都道府県の有効求人倍率がすべて1倍を超えている」――。アベノミクスなどの経済政策の効果が広く波及していると自己分析する現政権は、その成果をしきりに強調します。
では、地方に住む人たちはいったいどう受け止めているのでしょうか。中でも筆者が注視しているのは、北海道の景気動向です。かつて北海道の放送局に勤務し、経済記者として働いていた経験があるからです。
2月21日夜には最大震度6弱の地震が発生。その影響などが心配です。
地域の声を聞く「街角景気」
地域に住む人たちの生の声を知る際に役立つのが、内閣府が毎月公表している「景気ウォッチャー調査」です。
統計不正の問題が国会などで連日、取り上げられていますが、それをめぐる議論はさておき、同調査は株式市場の関係者の間でも“相場の先行指標”などと注目される経済統計の1つ。「街角景気」を反映した指標とも称されています。雇用や消費の現場にいる人たちに“肌感覚の景気”を聞くという、ユニークな調査手法を採用しているためです。
具体的には、スナック経営者、コンビニエンスストア店長、タクシー運転手など2,050人に「景気ウォッチャー」を委嘱。「3ヵ月前に比べて景気が良くなったか」「向こう2~3ヵ月の景気は良くなると思うか」などの質問に答えてもらい、その結果を指数化しています。
最も新しいのは2月8日に公表された1月分の調査。毎月第6営業日に前月分の数字を公表するという速報性の高さも、同調査が注目される理由の1つです。
同調査では、現状の景況感を表す「現状判断指数(DI)」と2~3ヵ月先の景況感見通しを示す「先行き判断指数(DI)」の2つの指標を公表。しかも、全国ベースだけでなく、北海道から沖縄まで全国12地域ごとのDIも併せて発表しています。
“生の声”は強弱観が拮抗
このうち、北海道の状況を見ると、現状判断DIは前月に比べて4.1ポイント低下。景気が良いか悪いかの分かれ目となる50の水準を3ヵ月ぶりに下回りました。
気がかりなのが、先行き判断DIです。前月から3.0ポイント低下。水準自体は51.3と50を上回っているものの下落は2ヵ月連続で、下落した4つの地域のうち、低下幅が最も大きくなりました。
景気ウォッチャー調査に掲載された、先行き判断DIに関する北海道の景気ウォッチャーの生の声を見ると、「大幅な賃金改定も見込めないため、今後、景気が上向くような大きな動きが出てくることは期待できない」(乗用車販売店)、「今後については、消費税増税前の駆け込み需要に加えて、皇太子殿下の御即位や10連休に伴う特需が期待できる」(旅行代理店)などと、強弱観が拮抗しています。