はじめに

起業すればなんでも経費で買える?

こうして見ていくと会社員ばかりがお得な気もしますが、「私の起業している友人はなんでも『領収書ください』といって経費にしている」というご意見もあるかもしれません。果たしてそうなのでしょうか。

個人事業主の場合、経費にできるのは事業に関連するもののみです。取引先との打ち合わせならOKですが、飲食代などの生活費をすべて経費にできるわけではありません。自宅兼事務所で事業を行っている人や、1台の携帯電話を仕事とプライベートで共用している人もいるでしょう。このような場合は、仕事とプライベートの使用割合に応じて按分することにより、支払額の一部を経費とすることができます。全額を経費にできるわけではありません。

携帯電話の基本料金の一部を経費にできたり、仕事に使用する場合は自宅や自動車関連費用の一部を経費にできたりと、個人事業主はお得な感じもします。

ただ注意していただきたいのは、個人事業主の場合は経費になるといっても、結局は自分がお金を払ったものが経費になっているということです。会社員のように、お金をつかってもつかわなくても一律に「給与所得控除」を受けられるわけではないのです。経費をたくさんつかって税金が減ったとしても、手元に残るお金がさびしいものになってしまっては、本末転倒な気がしますね。

こんなに違う、将来の年金受給額

毎月の安定したお給料と身分が保証され、手当てや福利厚生などを受けることができる会社員。働く場所や時間の自由度が高く、事業に必要なものであれば生活にかかわるお金の一部も経費となり、自分の腕しだいで収入が青天井となる個人事業主。収入(利益)が同じ場合は、働いている間の手取り収入はほとんど変わりません。ところが、社会保険料と税金の支払い割合が異なるため、将来受け取ることのできる年金額には大きな影響が出てきます。

仕事を辞めるまで年金に40年間加入しており、その間の平均年収が400万円だったとします。会社員の場合は厚生年金も受け取ることができるため、現状で試算すると毎月の年金額は約14万円となります。一方、個人事業主は国民年金のみを受給することになるため、毎月の年金額は約6万5千円となり、会社員に比べて半分以下になってしまいます。この先、年金制度がどうなっていくのかわかりませんが、会社員として厚生年金に加入しているかどうかで年金額にこれほどのひらきが出てくるのです。

会社員も個人事業主もそれぞれのよさがあり、年金を除けば収入と手取りの関係に大きな差はないことがわかりました。一番お得なのは、会社員の安定収入を確保しつつ、副業で個人事業主として稼ぐことではないでしょうか。

現在はまだ副業禁止の会社が主流ですが、これから日本の人口は減り、労働力が不足していきます。介護や子育てなど働く場所や時間に制約を受ける人も増えることでしょう。将来を見据えて副業を認める会社が増えれば、会社員と個人事業主のいいとこ取りもでき、いきいきと働く人が増えるのかもしれません。

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