はじめに

カルロス・ゴーン元会長の逮捕が伝わった昨年11月20日以降、日産自動車株は大きく下がりました。しかし、今年に入ってから、株価は反発。配当利回りに魅力を感じた個人投資家の買いが増えました。

2月末の株価は962.4円で、予想配当利回りは5.9%となりました。東証1部の平均配当利回りが2月末時点で2.2%ですから、5.9%でもとても高い利回りです。日産株は今が買い時なのでしょうか。


高利回りは信頼に足るか

投資判断の材料の1つに「予想配当利回り」というものがあります。会社側が予定している今期の1株当たり年間配当金を、現在の株価で割ることによって算出します。1株当たり配当金が変わらないまま、株価が下がると利回りが上がり、株価が上がると利回りが下がります。

日産の年間配当予想は57円なので、株価が901.3円と底をつけた昨年12月20日には一時6.8%に達しました。その後の株価の復調によって足元では5.9%まで低下していますが、冒頭でも触れたように、それでも市場全体の中では高水準です。

【日産自動車の株価と予想配当利回りの推移】
 日産自動車の株価と予想配当利回りの推移

この高い利回りは信頼して良いのでしょうか。というのは、株の配当利回りは確定利回りではないからです。将来、業績が悪化し配当が減らされれば、利回りは下がります。

先行きに対する悲観で売り込まれた日産株は、中長期的な投資価値から見て割安と考えられるので、一定の投資ポジションを持ちたいと思います。ただし、今後日産に起こることについて「最悪シナリオ」を想定すると、株価が一段と下がる可能性も残り、投資リスクは高いとも考えます。

過去25年間ファンドマネージャーを務めてきた私の日産株の現時点での投資判断は「ややオーバーウェイト」です。今もファンドマネージャーならば、ポートフォリオに0.8%程度組み入れたいと思います。東証株価指数における日産の時価総額構成比が0.5%なので、それを少しだけ上回るウェイトにしたいということです。

個人投資家の場合は、最小投資単位である100株だけ保有すれば十分と思います。100株を買うだけでも、2月末時点で9万6,240円かかります。保有している日本株に占める比率は結構高くなってしまうかもしれません。

日産が経営自主権を取り戻す期待も

ゴーン氏の逮捕以降、経営の混乱、親会社である仏ルノーとの主導権争いの発生など、日産を取り巻く環境にはマイナス影響が出ています。日産株がニュースに反応して急落したのは当然と考えられます。

ただし冷静に考えると、ゴーン氏が去ることは悪いことばかりではありません。日産がルノーの支配を脱し、経営の自主権を取り戻すきっかけとなる可能性もあります。

日産は、経営危機に陥っていた1999年にルノーから約8,000億円の出資を受け、経営危機を脱しました。CEO(最高経営責任者)に就任したゴーン氏の下で1兆円を超えるコストカットを行い、財務を立て直しました。その後、世界中で販売を拡大し、高収益企業に生まれ変わりました。そのことについて、日産はルノーに恩があります。

ただし、それは20年前の話です。高収益企業に生まれ変わった日産は、今では収益悪化に苦しむルノーを、逆に支える存在になっています。

ところが、経営危機を救ってもらった時にできたルノーを親会社とする経営体制は変わっていません。現在でも、ルノーは日産の発行済み株式の43.4%を握る親会社です。日産もルノー株を15%保有していますが、ルノーの子会社であることは変わっていません。そのため、日産の経営は事実上、ルノーに握られた状態が続いています。

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)