はじめに
経済産業省と東京証券取引所が2月21日に公表した「健康経営銘柄2019」。これで5回目となる今回は、28業種から37社が選ばれました。
この「健康経営」という言葉、最近では会社の経営や企業の評価をする時に注目されるようになってきたのですが、実は株式投資とも深い関係があるのです。今回は、健康経営と株価の関係について考えてみたいと思います。
そもそも「健康経営」とは何か
「健康経営」といわれると、「そもそも経営の“健康”って何だろう?」「ちゃんと健全な経営してるってことかしら?」と思うかもしれません。しかし、そういうことを意味しているわけではありません。
経産省のウェブサイトには、「健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」となっています。平たく言うと、従業員が健康でいられて、活躍できるように配慮した職場環境を会社が作る、ということです。
これは具体的に考えると、どんなことを指すのでしょうか。
よくある話として、長時間労働は精神や肉体的な疲れとなり、健康を損なう原因になります。ですから、ノー残業デーを設けたり、決められた時間以降は会社に残ってはいけないという制限を設けたりする対策をとっている会社もあります。最近の「働き方改革」とも密接に関係しています。
健康診断を行い、従業員に健康状態を認識してもらったり、健康相談の機会を設けたりすることも、健康経営の重要なポイントです。
ただし、こういった取り組みは、ここ最近の話でもありません。さらに一歩進んだ取り組みを進めている企業もあります。
たとえば、ランチタイムの前後などにヨガ教室を開いている会社もあります。椅子に座ったままできる「椅子ヨガ」なども注目されており、従業員が気軽にヨガで体をほぐせるようなトレーニングの指導があるようです。
企業が健康経営を進めるワケ
取り組みがここまで進化すると、従業員の健康のために会社がここまで負担するのが本当に良い事なのか、会社はヨガインストラクターへの報酬を支払わないといけないしコストもかかるじゃないか、と思うかもしれません。制度的に有給休暇を取得しやすくするなどの取り組みのほうが有効ではないか、という見方もあります。
なぜ会社はこのようなことをするのでしょうか。これには、いくつかの理由があります。
1つは、会社の生産性向上です。会社に出勤はしているけれども、昨晩は夜中まで仕事をしたため、朝から頭が働かない状態では、効率的ではありません。また、腰痛の人は長時間パソコン作業をしていると、能率が悪くなるでしょう。
たとえば、健康経営の1つとして、昼休みに昼寝を推奨する会社があります。仮眠室を設けたりするケースもあります。昼寝によって午後はすっきりした頭で仕事ができると、効率が上がるというわけです。
もっと直接的な2つ目の理由としては、コスト削減があります。これは企業が負担する医療関連費の削減です。
企業に勤める労働者の医療費負担は通常3割で、残りは健康保険組合が支払っています。この健康保険組合には企業負担分と従業員負担分があり、それぞれの負担割合はほぼ2分の1ずつというケースが多いようです。
つまり、従業員が健康を損ねて医療費が増えると、企業の負担が増えてしまうのです。そのため、健康経営を進めることで医療費負担を減らしていこうというインセンティブが企業側に働くことになります。