はじめに

株式市場は2019年に入り戻り基調が続いています。日経平均株価でみると、1月4日に1万9,655円で取引を開始したあと、2月上旬に一時的な調整局面はあったものの、ほぼ一本調子の戻りが続き、3月4日には一時2万1,860円まで上昇しました。

この間に、個人投資家の口座状況も改善してきています。信用取引を行っている投資家がどれくらい含み損益を抱えているかをパーセンテージで表した指標である、松井証券店内の「信用評価損益率」でみると、1月4日には-21.5%と極めて厳しい状況であったものが、3月4日時点では-9.4%まで改善しています。

では、個人投資家は強気に転じてきたのでしょうか?


個人投資家は強気?弱気?

一般的に、個人投資家は評価益が出るとすぐに利益確定を行う傾向が強いため、信用評価損益率は概ね0%~-20%で推移することから、個人投資家の損益状況は、ほぼ標準的な状況まで回復してきたと言えます。

個人投資家の、強気/弱気を判断するうえで参考になる商品として、「日経平均レバレッジ・インデックス連動型ETF」と、「日経平均ダブルインバース・インデックス連動型ETF」があります。「日経平均レバレッジ・インデックス連動型ETF」は、日経平均株価が上昇すると大きく利益を狙える商品、逆に「日経平均ダブルインバース・インデックス連動型ETF」は、日経平均株価が下落すると大きな利益が狙える商品です。ではここで、その2商品の信用買い残高の推移をみてみましょう(下図)。

日経平均株価が上昇するなかで、レバレッジ型の買い残高は減少する一方、インバース型の買い残高は急増しています。つまり、株価の下落を見込む個人投資家が増えているのです。

なぜ個人投資家は弱気なのか

では、個人投資家が株価の下落を見込む今、株価は割高なのでしょうか?

日経平均株価と日経平均株価の予想PERの推移を比較したものを見てみましょう(下図)。PERが高いということは、成長期待が高い一方で足元の収益からすると割高、ということになり、PERが低いということは、成長期待が低い一方で足元の収益からすると割安、ということになります。

グラフをみると、2019年以降、業績の下方修正を発表する企業も多く、日経平均株価の予想PERを示した各ラインもそれぞれ低下傾向です。しかしながら、日経平均株価はそれ以上に下落しており、2018年初頭には16倍程度あった日経平均株価の予想PERは、足元では12倍程度まで低下しています。

つまり、株価が割高だから下落を見込んでいるのではなく、現状の株価は割安でも企業業績がさらに悪化すると予想し、株価の下落を見込んでいるのです。

投資家が弱気に傾いているのは、米中貿易紛争や消費増税といった悪材料が影響していると考えられます。一方で、弱気のポジションが多いということは、前述したような問題が回避された際に大きく上昇する余地がある、ともいえるでしょう。

<文:シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎 写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ>

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