国内景気に対する海外からの逆風が強まりをみせています。先般発表された1月の鉱工業生産は前月比3.7%低下と、市場予想を大きく下回りました。

足元、急激な落ち込みを示している輸出動向を如実に反映した動きと捉えられますが、これで3ヵ月連続の低下となったことから、経済産業省では基調判断を「緩やかな持ち直し」から「生産は足踏みしている」に下方修正しました。

産業用ロボットや半導体製造装置が減少した生産用機械工業、NANDやDRAMといった半導体メモリーなどを含む電子部品・デバイス工業の落ち込みが目立つなど、中国向け輸出の失速が直撃した格好となっています。

ただ、そうしたなかで電子部品・デバイスの在庫調整が順調に進展していることは、大いに注目すべき事象と思われます。今回は、このような状況下にある国内景気の見通しについて解説します。


仕向け先の多様化で出荷の落ち込みを回避

スマートフォンの不振が長期化するなかで、米中摩擦の激化も加わって、中国におけるハイテク製品の生産に急ブレーキが掛かったことは、サプライチェーンに組み込まれている本邦企業に大きな打撃を与えている模様です。しかも折悪しく、米IT(情報通信大手)等によるデータセンターの建設ラッシュが一巡したことも、少なからぬ重荷となっていることは想像に難くありません。

にもかかわらず、電子部品・デバイスの出荷が底堅さを維持している理由としては、仕向け先の多様化が進んでいることに求められそうです。急激な電子化が進む車載向けやIoT(モノのインターネット)向けが好調を維持しており、スマホ向けの落ち込みをカバーする構図が日を追うごとに強まりをみせているためです。

足元では、次世代移動通信システム「5G」のサービス開始に向けた設備投資が盛り上がりをみせていることも、追い風に働いていると推測されます。

日本製品の比較優位性も保たれる

日本製品の比較優位性が保たれていることも、在庫調整の進展に大きく貢献している要因の一つと考えられます。足元で急減速しているアジア向け輸出を価格要因と数量要因に分解してみると、輸出数量が大きく落ち込む一方で、輸出価格は前年比プラスを維持していることがわかります。これは、汎用品への需要が落ち込むなかでも、付加価値の高い先端製品へのニーズはさほど衰えていないことを示唆しています。

覇権争いも絡んで、「5G」や「自動運転」関連への投資を加速する動きが途切れていないことなどが背景にあり、日本製品の信頼性の高さが発揮された格好です。村田製作所や太陽誘電が製作する大容量でコンパクトな最新型MLCC(積層セラミックコンデンサー)の需給がひっ迫し、値上げ観測が報じられていることなどは、その証左といえましょう。

実現可能性高まる秋口の復活シナリオ

米国及び同盟国による「中国包囲網」が敷かれるなか、中国は今後も輸出に多くを頼れない状況が続く公算が高く、ハイテク景気への警戒は止みそうにありません。

ただ、厳しい環境の下でも電子部品・デバイスの在庫がピークアウト感を強めていることを踏まえれば、中国の内需刺激策などへの期待も追い風に、秋口にも在庫調整が終了するシナリオが現実味を帯びることになりそうです。

足元の国内景気は、個人消費や設備投資の踏ん張りとインバウンド需要の恩恵などで緩やかな回復基調を維持しているとみられますが、外部環境の不透明感を拭えず、企業家・消費者マインドに下押し圧力がかかりやすい状況が続いています。電子部品・デバイス産業に明るさが増す展開となれば、有力な景気下支え役として機能することになる見通しです。

<文:投資情報部 堀内敏一 写真:ロイター/アフロ>