はじめに

高級フレンチレストランチェーンのひらまつは3月11日、予定していた第三者割当増資の実施を撤回しました。前週末の金曜日に実施を発表し、週明け月曜日に撤回したわけですが、もしも実現していたら最強のタッグになった可能性があるだけに、少々残念です。

17億円の増資引受を予定していたのは、「ウィーンの森」という事業再生や株式公開支援コンサルなどを手掛ける会社の代表である森正文氏。森氏は高級ホテル・旅館、レストランの予約サイト「一休.com」の創業者です。2016年1月に一休をヤフーに売却、400億円を手にすると、すべての役職から退き、その引き際の鮮やかさが話題になりました。

ひらまつの本業は高級フレンチレストラン経営ですが、近年は高級ホテル経営にも進出しています。高級フレンチを堪能することを目的に、高級ホテルに泊まってもらおうというのがコンセプト。高級レストラン+高級ホテルですから、まさに森氏のテリトリーです。

リリースには「協力関係の樹立や調達資金の使途など詳細な点について最終的な合意を得ることができなかった」としか書かれていません。会社側に問い合わせたところ、「これ以上詳細な理由は開示しないことで森氏と合意している」そうなので、発表から1営業日で撤回した詳細な理由はわかりません。


すでに4軒のホテルを運営

ひらまつといえば、ホテルオークラやフランスで修行を積んだ平松博利シェフが、帰国後に西麻布でフレンチレストランを開業。パリにも出店し、日本人オーナーの店としては始めて1つ星を獲得しています。

経営者としての才能にも恵まれたようで、高級フレンチレストランを多店舗展開し、2003年に上場を果たしています。2016年に社長を退き、代表権のない会長に就任。人材育成に専念することを宣言しています。

現在、ひらまつのレストランは都内18ヵ所(うち2ヵ所はイタリアン)のほか、全国主要都市に13ヵ所あり、国内31店舗、パリを加えて32店舗あります。このほかにホテルを4軒運営しています。ホテルは1泊10万円以上する高級ホテルで、ひらまつの料理を堪能することを目的としたコンセプトです。

ホテル事業への参入は2016年。7月に賢島、10月に熱海、12月に仙石原と、3ヵ所を立て続けにオープンさせ、2018年7月には沖縄宜野湾に4ヵ所目のホテルを開業しています。今後も京都、軽井沢、那須での開業を準備中です。

ひらまつがホテル運営に乗り出したワケ

それにしても、なぜホテルなのでしょうか。実は、この会社の成長を支えたレストランウエディングが頭打ちになっているからなのです。

図1

上のグラフはひらまつの連結売上高と、そのうちの婚礼関連の売上高、それに本業の儲けを示す営業利益の推移を集計したものです。2014年3月期だけは決算期の変更があって、6ヵ月決算だったので抜いてありますが、店舗数の拡大とともに売上高は順調に成長しています。

しかし、営業利益は2013年9月期でピークアウトしています。これは婚礼売上高のピークアウトと同じタイミングです。

2015年3月期以降は婚礼売上高の減少による減益と、ホテル事業への投資が重なり、営業利益は下降線をたどっています。ホテルは好調のようですが、それでは埋め切れていないわけです。

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