はじめに

コンビニ弁当で電子レンジ保有率は若干低下?

さて、女性では電子レンジの保有率も若干低下しています。これは、コンビニ弁当などの調理食品を買う女性が増えているためかもしれません。コンビニで温めてもらえば電子レンジは必要ありません。

実は、男性同様に忙しく働く女性が増えたことで、今、1人暮らしの男女の食生活は似通ったものになっています。同じ調査で、30歳未満の単身勤労者世帯の男女の食料費を見ると、男性では食材の支出額が増加しており、自炊が増えています。

一方、女性では食材が減り、調理食品が増えています。つまり、自炊よりも買って食べることが増えています。ただし、食材の支出額は男性より女性の方がやや多いため、現在でも女性の方が自炊をする機会は多いようです。

さらに、食材の内訳を見ると、女性は野菜・海草や魚介類が、男性は穀類や肉類の支出額が多い傾向があります。同じ自炊でも、女性はダイエット意識から炭水化物を控えて、野菜中心の食事をしているのでしょう。このことが男性の方が女性より炊飯器の保有率が高い背景にあるのかもしれません。

スマホやパソコンがあればテレビはいらない?

次に、テレビなどの教養娯楽用耐久財や通信機器の保有状況を見ていきましょう。

図2 30歳未満の単身勤労者世帯の教養娯楽用耐久財・通信機器の保有率の変化
(a)男性
図2(a)
(b)女性
図2(b)
総務省「全国消費実態調査」より作成

1999年から2014年にかけて、男女ともパソコンが大きく伸びています(男性+48.9%pt、女性+47.8%pt)(図2)。また、もともと8割程度を占めて保有率の高い携帯電話は2004年で男女とも9割を超えるようになりました。

なお、いずれの調査時点でも、パソコンの保有率は男性で、携帯電話の保有率は女性で高くなっています。女性は男性と比べて携帯電話で手軽にインターネットやメールを楽しんでいるということなのでしょう。

ところで、2010年頃から、消費者全体でガラケーからスマホへの移行がはじまりました。30歳未満の単身勤労者世帯では、2014年のスマホ保有率が男性81.3%、女性95.4%です。女性の保有率の方が高いのは、やはり手軽に楽しみたいということなのでしょう。

なお、総務省「通信利用動向調査」によると、2017年のスマホ保有率は20代の男性93.8%、女性95.2%です。2019年現在では、1人暮らしの若者のスマホ保有率もさらに上がっているでしょう。

一方で保有率が低下しているのはテレビです。女性は横ばいですが、男性は1999年から2014年にかけて低下しています(▲15.4%pt)。今、スマートフォンやパソコンがあれば、テレビ番組を動画アプリで楽しむことができます。特に男性では2014年でパソコンの保有率が95.9%にものぼりますので、テレビを持つ必要性が薄れているのでしょう。

なお、NHK「国民生活時間調査」によると、20代の男女のテレビ視聴時間は減少し、ネット視聴時間が増加しており、特に男性で顕著です。

女性ではテレビ保有率が横ばいで推移している背景には、男女で観たい番組の違うことがあるのかもしれません。女性はドラマや映画、男性はニュースなど情報番組を見たいとすれば、女性の方がテレビの大画面で観たいというニーズが強いことが考えられます。

これからは1人暮らしシニアが主要ターゲットに

1人暮らしの若者の家電保有率は全体的に上昇し、便利な生活をするようになっていますが、さらに暮らしの利便性が高まり、技術革新が進むことで、逆に保有率が下がる製品も出ています。特に情報通信領域の進化は顕著で、製品の機能的にも内容(番組、コンテンツ)的にも、通信と放送の融合が進んでいます。

これまで1人暮らしと言えば若者という印象が強かったかもしれません。しかし、今、単身世帯の3割は65歳以上であり、2040年には半数となります 。今後は、1人暮らし向けの家電製品は新生活をスタートする若者向けというよりも、高齢者が暮らしやすいようにという視点が強くなるでしょう。

この記事の感想を教えてください。