はじめに

中国株は政府の「本気モード」が下支え

2月下旬以降の中国株は、米国株をしのぐ好パフォーマンスを実現させました。米中貿易問題の進展に対する期待と、政府の景気支援策に対する期待が、投資家心理を大きく改善させたと解釈されます。また、MSCIが指数算出における中国株組み入れのウェイトを引き上げると発表したことも、相場の追い風になったと考えられます。

中国市場では個人投資家の存在感が大きく、いったんトレンドが出始めると、個人主導で相場が一方向に傾く傾向があります。そういう意味では、足元の相場はやや期待先行で、割安感が薄れてきているようにも見えます。

3月の全国人民代表大会(日本の国会に相当)では、2019年の経済成長率の目標が前年から引き下げられ、6.0~6.5%に設定されました(2018年の目標は6.5%前後)。

ある程度、景気の減速を受け入れる姿勢が示される一方で、従来からの巡航速度レベルでの成長ペースから大きくは外れない意志が示されたとも読み取れます。そのために必要な財政支出の拡大や減税などの景気刺激策は、惜しみなく実行されるイメージで、中国政府は是が非でも6%台の成長を死守してくると予想されます。

中国政府による「本気モード」の取り組みは、いずれ中国経済の底打ち・回復につながってくるとの見方です。実際、3月の製造業PMI(購買担当者指数)は、4ヵ月ぶりに好不況の分かれ目となる50を超え、景気持ち直しの兆しが見えつつあります。

すでに株価のほうは先行して回復を見せていますが、今後の相場展開に関しても、米中貿易交渉がこじれない限りは、株価下振れのリスクは限定されると考えています。

気になる日本株の戻りはいかほど?

最近の日本株動向もおおむね堅調と評価されるものの、今ひとつ上昇の波に乗り切れていない印象があります。中国との経済的な結びつきの強さから、中国経済に対する不安感が日本株に投影されている面もあるのでしょう。

大和証券が直近でまとめた主要企業(集計対象:200社)の業績見通しによれば、2019年度の経常利益は前年度比で2.4%増加する予想となっています。3ヵ月前と比べて、大幅な見通しの下方修正を迫られましたが、その背景にあるのは多分に中国要因によるマイナス影響です。

ただ、前述のとおり、本気の中国が政策の効果を最大限に発揮してくるようであれば、このマイナス影響も徐々に縮小していくと考えられます。一方で為替に関しては、足元で円安基調を維持しており、業績への影響は限定的なものにとどまっています。

2015~2016年当時の中国ショック時の状況と明らかに異なるのは、為替の円高が進んでいないことであり、その分だけ安心感を持って日本株に取り組む余裕があります。

4月は株式需給が好転する季節性があり、日本株にとっては出遅れを挽回するには良いタイミングとなり得るでしょう。米国株に水をあけられた株価パフォーマンスのギャップが、どこまで埋められるのか、注目です。

<文:大和証券 投資情報部 チーフ・グローバル・ストラテジスト 壁谷洋和 写真:ロイター/アフロ>

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