はじめに
東京では今、至るところで再開発が進行しています。新しいビルができて就業人口が増えると、大量発生してしまうのが“ランチ難民”です。
かつて台頭した弁当の路上販売は、法的には「行商」扱いで、自治体によって対応がまちまち。東京都は2015年に規制を強化しましたので、かなり淘汰されているのではないでしょうか。
代わって台頭してきているのが、正規にビルの所有者と契約して、ビルの敷地内で堂々と営業をしているフードトラックです。
フードトラックを支援する業者たち
11時近くなるとやってきて、14時近くには店仕舞いをして帰っていくテイクアウト専門の業者。最近になって見かける機会が増えてきたように思います。
路上販売の弁当が低価格で質も価格なりであったのに対し、フードトラックのメニューはかなり本格的。その分お値段も600円~1,000円と高めですが、品質はレストランで食べればその倍近い金額を払わなければ食べられない水準です。
それもそのはず、フードトラックの経営者たちの多くは、本格的な修行をし、独立を目指すシェフたちであったり、すでにどこかに店を構えていて、フードトラックでの販売もやっているという人たちなのです。
実は最近になって、こうしたフードトラックがオフィスビルの敷地内で営業を始めるケースが増えています。その背景にあるのは、フードトラック事業者のためにオフィスビル側と出店交渉をしてくれる専門業者の存在です。
マッチング業者のビジネスモデル
オフィスビルとフードトラック事業者のマッチングを手掛ける事業者は、現在のところ「TLUNCH」というブランドで展開しているMellowが最大手。2番手が「ネオ屋台村」というブランドで展開しているワークストア・トウキョウドゥです。
TLUNCHの場合、フードトラック自体は出店者側が用意し、営業許可など飲食店経営に必要な手続も出店者側が行います。一方、オフィスビル側との交渉や消防への届出などはMellowの役割になっています。
フードトラックはMellowに売上高の15%を支払い、Mellowの取り分は10%で、5%がオフィスビルのオーナーの取り分です。15%という手数料は一見負担が重そうですが、フードトラックは初期投資が200万円程度で済み、テイクアウト特化なので、ホールスタッフの人件費が不要になります。
「100食出れば営業利益率は40%を超えるはず」(Mellowの森口拓也代表)なので、充分ペイするそうです。
突破口はどこにあった?
Mellowがこのビジネスを始めたのは2016年2月。創業者の1人がフードトラックの営業経験者だったことから、口コミで出店希望者は難なく集まったそうですが、スペースの開拓はゼロからのスタート。当初は難色を示すオフィスビルが多かったそうです。
まずネックになったのは、ビル側の設備の問題。車が乗り入れても破損しない床材の場所があるかどうか、または電源や搬入路の確保が可能かどうか、といった問題です。このほか、フードトラックが入ることで景観が損なわれる、火災など事故が心配などなど。
ビル側が受け取る手数料はフードトラックが稼ぐ売上高にスライドしますから、ちゃんと集客ができるのかという問題もありました。
景観の問題は、フードトラックの色やメニューの表示の仕方をオシャレにすることで屋台のイメージを払拭。現場のオペレーションをマニュアル化することで、事故の懸念も解決したそうです。
何よりも問題になったのは信用です。実績のないベンチャーと、一介の料理人たちの組み合わせですから、そんな人たちに貸して大丈夫なのかとビルのオーナーが考えるのも無理からぬことでした。
突破口となったのはREIT(不動産投資信託)の運用会社です。彼らは保有している物件の運用成績を上げることが使命ですから、物件のバリューアップにどん欲。J-REIT第1号の日本ビルファンド投資法人が契約してくれたことで、一気に弾みがついたそうです。