はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回は読者の家計の悩みについて、プロのFPとして活躍する野瀬大樹(のせ・ひろき)氏がお答えします。
学生の弟がいます。私は会社勤めをしているのですが、もうすぐ引退する親に代わって、弟を自分の扶養に入れるべきかを考えています。その場合の条件について教えてください。
(1)同じ家に住んでいることが必須条件になるのでしょうか。
(2)将来、年金などで不利な扱いを受ける可能性はあるのでしょうか。
(3)そもそも、私の扶養に入れると、弟本人は国民年金の分だけ、まるごと負担が浮くのでしょうか。
(4)会社の負担は増えるのでしょうか。
いろいろと知らないことばかりですが、よろしくお願いいたします。
(30代前半 独身 女性)
社会保険の「扶養」の条件
野瀬: おそらくお話しされているのは「社会保険」の扶養についてだと思います。
社会保険には2つあります。「年金」と「健康保険」です。今回、お知りになりたいのは「年金」とお見受けしましたが、ついでですので「健康保険」についても合わせて考えてみましょう。
<年金>
要件:配偶者のみ
※夫が「厚生年金」または「共済年金」に入っている
収入要件:130万円未満
<健康保険>
要件:子・孫、親・祖母、配偶者および弟妹(同居は必須ではない)
※上記以外は同居は必須
収入要件:130万円未満
所属している保険組合による部分もあるので、一度確認することをおすすめいたします
弟さんは学生とのことですので、収入要件はクリアしていると思います。ですからそれ以外の要件と、質問いただきました(1)から(4)について考えましょう。
年金について
(1)同居は条件になるのか
同居は条件ではありませんが、弟さんは質問者の方の配偶者ではないので扶養に入ることはできません。これはご両親であっても同じです。今まではおそらくご両親が「国民年金」を毎月1.5万円程度納付していたのだと思われます。
(2)将来の年金はどうなるか
国民年金に加入することになります。これまで通り毎月約1.5万円を納付するか、免除(学生納付特例制度)の申請をしないと将来国民年金がもらえなくなる可能性があります。
(3)国民年金の負担について
(2)でもお話したように、国民年金の負担は生じます。負担を回避したければ、学生であることを理由とした免除等の申請が必要になります。
(4)会社の負担について
本人負担のみなので会社の負担が増えることはありません。
健康保険について
(1)同居は条件になるか
質問者の方の場合、弟さんなので同居は必須の条件になりません。
(2)将来の給付
質問者の方の扶養に入れば、健康保険には加入できます。病院に行っても3割負担で済むということですね。
(3)健康保険料の負担について
扶養に入れば、質問者の方が支払っているだけで弟さんも加入していることになるお得な制度です。
(4)会社の負担について
負担は従来通りです。(3)も同様ですが同じ負担で弟さんが追加的に加入できるのが大きなメリットとなります。
そのほか税務上のメリットも
最後に一つ、税務上のメリットです。
弟さんの年齢が16歳以上19歳未満の場合は38万円、19歳以上23歳未満であれば63万円を質問者の方の所得税の計算において差し引くことができます。
つまり、「38万円×税率」、もしくは「63万円×税率」がお得になります。この場合、同居が要件にはなりません。弟さんがアルバイトをしていたとしても、その金額が年103万円以下で、質問者の方が生活の面倒を見ているのであれば問題ありません。
結論としてご両親が引退される以上、質問者の方が弟さんを扶養することになると思うのですが、特にご両親含め、一家の負担が増えるということはありません。これまで通り、国民年金の負担が生じることになります。それを避けたいのであれば免除申請が必要になります。
一方、健康保険についてもまったく負担が増えることなく、弟さんが恩恵を受けられるのでしっかり扶養が変わったことを組合に連絡してくださいね(税務上の恩恵も!)。