はじめに

流通大手のイオンが4月10日に発表した2019年2月期(2018年度)決算。売上高に相当する営業収益は前期比1.5%増の8兆5,182億円、本業の儲けを示す営業利益は同0.9%増の2,122億円と、過去最高益を更新しました。

しかし、同社の株価は決算発表を挟んで9営業日連続で値下がり。4月1日の2,342.5円から、同月12日には2,016.5円まで下落。15日には2,049.5円と持ち直したものの、翌16日には2,010.5円に反落(いずれも終値ベース)。株価のダウントレンドに歯止めがかかっていません。

最高益を更新したのに、株価は2週間ほどの間に14.2%も下落しています。いったい、イオンに何が起きているのでしょうか。


中核事業の不振で下方修正

イオンの前期決算で収益を牽引したのは、海外での業績が好調だった3つの事業です。総合金融事業は東南アジアで新たに始めたカードやオートローンが好調。デベロッパー事業は中国や東南アジアでのドミナント出店が奏功。小売りでも中国、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどが伸びました。

ただし、本決算の発表に先駆けること5日前、同社は期初段階に発表していた業績計画を下方修正していました。総合スーパー(GMS)、食品スーパー(SM)、サービス・専門店の3事業が期初想定を大きく下回ったことが主因です。

会社側の説明によると、集中豪雨などの天候要因に加えて、年度後半にかけて利用客の消費マインドが低下。これに適切に対処できなかったほか、専門店事業で滞留在庫の処分を積極化させたことで利益率が低下したといいます。

好調3事業で不振3事業をカバーし、かろうじて最高益の更新と営業増益はキープできたものの、純利益は前期比3.6%のマイナスに。5日の下方修正を境に、株価の下降ペースは加速していきました。

アナリストから厳しい声が噴出

これを受けた2020年2月期(2019年度)について、イオンは営業収益が前期比1.0%増の8兆6,000億円、営業利益が同8.4%増の2,300億円という計画を組んでいます。再び増益ペースが加速する想定です。IRを担当する三宅香執行役は「目標値を着実に達成したい」と口元を引き締めました。

ただし、決算発表と同日に開催された報道・アナリスト向けの決算説明会では、アナリストから厳しい意見が噴出しました。2017年にイオンが発表した3ヵ年の中期経営計画の説明会で、岡田元也社長が“2019年度の目標”として言及した「営業利益2,900億円」に遠く及ばない目標数値だったからです。

中期計画に未達となる今期予想を出した理由について、経営企画担当の若生信弥副社長は「昨年秋以降、米中貿易摩擦に端を発した中国経済の減速や国内の景気後退懸念によって、消費マインドが大きく落ち込みました」「今年10月の消費増税を頭に入れつつも、横に置いて中期計画の数字を作りました」と弁明しました。

そのうえで、「今となると、もう少しコンサバな計画を出すべきだったかもしれません。『(中期計画の数字を)忘れてください』と言うつもりはないですが、環境が変化しているので、見直していく必要があるかもしれません」と言及しました。

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