はじめに
東京の桜開花が早いと景気後退にならず
ところで、桜の開花の時期と景気局面には実は密接な関係があることを、皆さんご存じでしょうか。気象庁は1953年から「生物観測調査」を実施しています。その調査項目の中に、全国各地の桜の開花日と満開日があります。
気象庁が観測している東京の桜の標本木は、靖国神社の桜です。東京の桜の開花日は、平年では3月26日。現在の平年は1981年から2010年の30年間の平均です。ちなみに、1つ前の平年は10年前の1971年から2000年の30年間の平均で、東京の桜の開花日は3月28日でした。
靖国神社の桜は景気の動きがよくわかるようです。東京の桜の開花日が平年より5日以上早い3月21日以前だった年は、桜の開花時期が景気後退局面になったことは一度もありません。
「生物観測調査」が実施された67年間(1953~2019年)で東京の桜の平年開花日3月21日以前に開花した年は14回あります。一番早かったのは2002年と2013年の3月16日。次の早い開花第3位は2018年の3月17日です。第4位は2004年の3月18日。第5位が1966年など4回あった3月20日でした。
今年の東京の桜の開花は3月21日になりました。歴代9位タイです。昨年の3月17日より4日遅かったのですが、平年の3月26日より5日早かったのです。
日本人は毎年、桜の開花を待ち望んでいます。桜の開花が早いと、何となく気分もウキウキしてきます。消費者心理にプラスに働くようです。
また、実際に消費支出にも好影響を与えます。開花が早い年は3月の気温が高い傾向があり、春物衣料が早めに買われ出します。なかなか桜が咲かずに寒い日が続いていると、冬物をいつまでも着用し、春物を買う必要があまりなくなります。
加えて、日本人は桜が大好きです。開花後は花見に出かけ、桜を眺めながらの宴会で盛り上がります。お花見目的の旅行などへのニーズも大きいものがあります。これが満開を過ぎて散るまで続くため、その間が長ければ長いほど、景気にはプラスに働くことになります。
長く花見できると景気も持続
東京の桜が平年の3月26日より早い開花日の年で、開花から満開までが長く、花見がたくさんできた年は、その後1年超にわたって景気の拡張局面が長く続く傾向があります。
これまでは1966年の16日がトップで、その年は景気拡大が1年超続きました。平年より早い開花日で満開までの日数が11日以上の年は計9年ありますが、そのほとんどで1年超にわたり景気拡張局面が継続しています。
今年の満開は、開花から6日後の3月27日で、間隔は平年の8日より2日短かったのですが、満開後に寒い日があったので、4月6日・7日の土曜日・日曜日頃まで見頃が長く続きました。満開になった後もすぐ散ってしまうのではなく、長く花見ができたという珍しいケースになりました。
今のところ、日本の景気はもたついています。3月の日銀短観では大企業製造業・業況判断DIは悪化しましたが、類似調査の4月のQUICK短観4月調査では2月・3月に比べ改善し、底打ち感が出ています。景気も桜のように満開を迎えられるかどうかが、注目されます。