はじめに

大口投資家“クジラ”も動き出す

金融市場における巨額投資資金の出し手として注目される年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2015年9月16日に「国連責任投資原則(PRI)」に署名したことも、ESG投資が注目される要因となりました。

PRIは、2006年にコフィ―・アナン国連事務総長(当時)が世界の機関投資家に対して、ESGを投資プロセスに組み入れることを推奨したイニシアティブです。

GPIFは、ESG評価が高い銘柄をスクリーニングしたESG総合型指数や、女性の雇用促進などに取り組む女性活躍指数、温室効果ガス排出量が小さく、情報開示を行う企業のウエートを高めた指数などへの投資を随時開始しています。

このようなポートフォリオの選択や管理にESG要素を考慮した投資の残高(ESG投資残高)は、世界全体では2014年調査の18兆ドルから、2016年調査の23兆ドル、2018年調査の31兆ドルと約7割増加しました。米国では2018年調査に12.0兆ドルと2014年調査から1.8倍増加しましたが、日本でも2.18兆ドルと2014年比で311倍に膨らんでいます。

投資残高

機関投資家によるESG投資の目的が「中長期的な投資成果の向上」にあることは、コンセンサスを得つつあります。女性を積極的に役員や執行役員に選任している企業への投資は、リターンが高く、リスクは低いとの分析結果なども発表され始めています。

今後、ESG選別的な投資の視点が強まっていけば、反ESG配慮型企業への資金流入が抑制されると同時に、ESG配慮型企業への投資を選択する動きが強まっていくでしょう。世界的に見ても、ESG投資は増加基調をたどると予想されます。

<文:投資情報部 シニアストラテジスト 山田雪乃>

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