はじめに
蒲田にリピーター外国人観光客を
なぜこのようなホテルが誕生したのでしょうか。運営会社であるホテルマネージメントジャパンの箕輪将臣さんは、「地域に根差し、土地が持っている魅力を感じてもらえるホテルを作りたかった」と話します。
現在、大田区には3,000社もの小さな工場があり、高い技術力で日本のものづくりを支えています。職人や工場労働者の街とあって、人情味あふれた雰囲気の飲み屋も多数。そんな蒲田の文化や空気をたっぷり味わってもらえるホテルをコンセプトにしたそうです。
フロントに飾られた町工場の写真
もちろん、羽田から近いという立地を生かしてインバウンド客を見込みます。大田区内の宿泊客のうち、2~3割が外国人と推定されますが、このホテルでは宿泊客の50%は外国人観光客と想定しています。
特に、日本を2度、3度と訪れるリピーターで、「日本の文化や生活に触れたい」と考える人に売り込んでいく戦略。東京五輪を来年に控え、日本のものづくりの魅力を伝え、インバウンド客を取り込む構えです。
町工場のビジネスにもつながる?
ホテルづくりには、地元の約150社が加盟する大田区工業連合会青年部が全面協力しました。当初は協力を求められてもピンとこなかったそうですが、完成してみると、自分たちの技術をアピールできる良い場になったといいます。
自身も鉄工所の社長で、同連絡協議会の関英一さんは「自分たちの技術が人の目に触れる機会は少ない。宿泊した人が一人でもものづくりに興味を持ってくれたら」と話します。また、インバウンド客の目に技術が触れ、将来のビジネスにつながることも期待します。
工業用の建材が使われた部屋
蒲田の街を満喫してもらおうと、スマートフォンで使うことができるオーディオガイドアプリ「ON THE TRIP」も開発しました。GPSが内蔵され、街の概要やホテルに飾られた町工場ゆかりのプロダクト、近く居酒屋や銭湯などを、地図とともに、写真や4ヵ国語の音声で案内してくれます。
蒲田というとあまり観光スポットのイメージはないですが、羽田空港からも近く、飾らない日本の下町の雰囲気を楽しみながら滞在するには、良い場所なのかもしれません。「町工場」というコンセプトが外国人観光客に刺さるか。これからが楽しみです。