はじめに

4月27日に始まった10連休もあっという間に過ぎ去りました。日本の連休中の米国株式市場は順調に上昇したことから、連休明けは日本株も上昇して始まりそうだなと思っていたら、事態は急転。ドナルド・トランプ大統領が突如「現在10%の中国からの輸入品の関税率を5月10日から25%に引き上げる」とツイートしました。

これを受け、5月6日の中国市場で代表的な株価指数である上海総合指数は6%近い暴落となり、米国市場でダウ平均も一時500ドル安近くまで下落しました。米中交渉は順調に進んでいて妥結も間近とみられていましたから、急な事態の変化が驚きを持って迎えられました。米中の対立は根深く、まだまだ波乱含みの交渉が続きそうです。

一方、10連休が明け、企業の決算発表がピークを迎えています。日本の上場企業の多くは3月末決算を採用しているため、4月末から5月中旬にかけて本決算の発表が行われます。

今年は、上述した米中の貿易対立に伴い、中国の景気が鈍化した影響から、日本企業の業績が不安視されてきました。そのため、普段より一層決算発表への注目が高まっています。そこで、企業の決算発表を投資成果に結びつけるうえで大切なポイントをご紹介します。


決算発表で最も注目すべきポイント

企業の決算発表は見るべき大切なポイントがいくつもあります。以前の記事では、企業が通常、決算短信では発表しない「3ヵ月に区切った業績」を見ることをご紹介しました。

企業は通常決算短信で第2四半期なら6ヵ月分、第3四半期なら9ヵ月分、本決算なら1年分と「業績の累計値」しか発表しません。それだけを見ていると直近の業績トレンドがわからないので、直近の3ヵ月をチェックするクセをつけましょうという主旨でした。

企業決算を分析するうえで同様に大切なのが、「企業の業績予想をチェックする」というものです。上場企業は原則として、本決算の発表時に「今期の業績予想」を発表します。

「原則として」と書いたのは、たとえば証券会社のように市況が業績に与える影響が大きく、合理的な業績予想を発表することが困難な場合は、業績予想を出さなくても良いとされているからです。とはいえ、ほとんどの企業は業績予想を発表します。

業績予想にも“クセ”がある

企業の業績予想は「私たちは今年1年間でこれくらい売り上げと利益を稼ぐつもりです」という意思表明のようなものです。企業の業績について一番情報を持っているのは当然企業自身ですから、マーケットは業績予想に注目しており、その予想が強気なものであれば株価上昇に、弱気なものであれば株価下落につながる傾向があります。

最新の具体例をご紹介しましょう。

4月25日に決算発表を行った京セラ(証券コード:6971)は2018年度の売上高が1兆6,237億円(前期比+3.0%)、本業の儲けを示す営業利益が948億円(同+4.5%)だったと発表しました。そして2019年度の売上高予想を1兆7,000億円(同+4.7%)、営業利益予想を1,400億円(同+47.6%)と、かなり強気の予想を公表しました。すると決算発表翌日の26日の株価は5%近い大幅上昇となりました。

このように、基本的には強気な業績予想を発表した企業の場合株価は上昇する場合が多いのですが、注意しなければいけないポイントもあります。それは「保守的な業績予想をするが、結果的にのちのち業績予想を上方修正する企業」や「強気の業績予想をするが、結果的に達成できず、業績予想を下方修正ばかりする企業」もあるということです。

企業の“クセ”を見抜くには?

前者の場合はまだ良いのですが、後者はなかなか困りものです。たとえば、ポテトチップスなどのスナック菓子メーカーの湖池屋(2226)は業績予想を下方修正することが多い企業です。

下図は、湖池屋の2014年1月期以降の営業利益予想の修正履歴をグラフ化したものです。多くの期でグラフが途中で下向きに折れていることがわかります。

業績予想修正履歴

線が折れていない2016年1月期についても、結果的に営業利益の実績は予想に届かず、予想を下回って着地しています。このように業績予想の下方修正が行われると、失望して株を売る投資家が多いため、株価は大きく下落する場合があります。

マネックス証券の「マネックス銘柄スカウター」など、証券会社が提供しているツールには企業の業績予想の過去の修正履歴が見られるものもあります。業績予想が強気だからとすぐ飛びつくのではなく、どのようなクセを持っている銘柄なのかチェックする習慣をつけ、ぜひ企業の決算発表を投資成果に結びつけていただければと思います。

<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>

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