はじめに

「ベストバイ」で認証ビジネスも

こうした検証をした結果、良くない商品は「ワースト」として徹底的に問題箇所を書き尽くすLDKですが、メーカー側のクレームはなかったのでしょうか。

「文句はほとんどないですね。逆に、『社内的にも改革のきっかけになった』という話は聞きます」と木村さん。つまり、メーカー自身も短所はわかっているものの、何らかの"忖度"で商品を改良できない理由があるというわけです。

今では「うちの商品を取り上げてほしい」というメーカーからの依頼もあるそうですが、テストする商品を選ぶときには、有名だったり売れていたりするものだけではなく、全然知らない商品も混ぜておくようにするのだそう。

「よく知らないマスカラをたまたまテストに使用したら、それが1位になったんです。それがスヴェンソンという薄毛男性向けの製品メーカーが出している商品でした。あとから聞いたら、あまりに売れなさ過ぎてドン・キホーテで在庫処分して販売をやめようしていたところだったとか(苦笑)」(木村さん)

良い商品でも、マーケティング力が劣れば消えていくのが消費者向け商品の現状です。世の中の美容雑誌は広告で溢れかえっており、いいものが誌面に載っているとは限りません。Web上の口コミサイトも、様々な手を使って「ランキング1位」を勝ち取るワザがあり、実際は実力がなくてもランキング上位を獲得できます。だからこそ、徹底的な検証に基づくLDKのランキングが重宝されるのです。

実際LDKが「ベストバイ」として掲載した製品は、ドラッグストアのPOPでも使われることが多く、メーカーから「LDKに製品の監修をお願いできないか」と声がかかることも多いそうです。

そこで、「いずれは『ベストバイ』製品の認証ビジネスができないかと考えています」(木村さん)。認証ビジネスによりLDK本体を支えるような雑誌の収益構造を目指しているということなんですね。

紙の雑誌を売るだけでは生き残れない

この10年で雑誌ビジネスは一気に縮小しており、売上が急減している雑誌も数多くあります。そんな中、木村さんはLDKがいまだに好調な理由をこう語ります。

「今の雑誌ビジネスは付録をつけないと部数が伸びません。うちも紙のLDK単体なら常に赤字です。しかし、私たちは付録はやりませんから、ムックで利益を確保すると同時に、電子書籍で強みを出せます。紙媒体でも出すものとほぼ同じですから、原価率も低い。dマガジンやAmazonプライムなどに配信し、毎回トップのほうに入りますが、このレベニューシェアの収益がどんどん大きくなってきまして、今では紙の雑誌より電子書籍の収益のほうが大きいのですよ」

だからこそ、ラボを自前で作り、さらに検証結果に磨きをかけることが、雑誌存続のために必要だということなのです。雑誌にこだわることは部数にこだわることとは似て非なるもの。「紙の雑誌ありき」で考えているからこそ、今の雑誌業界は行き詰まっているともいえます。LDKが切りひらく雑誌業界の新しい地平に今後も注目です!

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