はじめに

人件費や原材料費の高騰や、10月に予定されている消費増税を前に、身の回りの商品やサービスの値上げが相次いでいます。そんな中、鉄道駅構内に設置されているコインロッカーも値上げしていることがわかりました。

JR東日本や東京メトロなど、都内の駅コインロッカーが2019年春ごろから価格を改定。なぜ一斉に価格改定をしたのでしょうか。その背景を探ります。


従来の利用料金に100円上乗せ

JR東日本エリアの駅コインロッカーを管理するJR東日本リテールネットは、大型サイズのコインロッカー(600円〜)の利用料金を100円値上げ。エリア内の全駅が対象で、4月末までに都内の駅は値上げが完了しました。小型と中型の料金は据え置きです。

東京地下鉄(東京メトロ)は、コインロッカーを設置している107駅で、5月7日から順次価格を改定を進めています。小型サイズのロッカー利用料金(300円)を100円値上げし、中型、大型の料金は据え置き。PASMO対応型のみが対象となり、鍵式タイプの料金の変更はありません。

都営地下鉄のコインロッカーも、全駅の計130台について5月中旬から順次値上げします。200円、300円の小型ロッカーの利用料金がそれぞれ100円上がります。中型、大型のロッカーについては、東京メトロと同様、料金の変更はありません。

都内の駅構内コインロッカーの価格改定一覧
都内の駅構内コインロッカーの価格改定一覧

値上げとインバウンドの意外な関係

JR東日本リテールネットのコンビニエンス営業部担当者は、今回の料金変更の理由について「JRと連携して進めているコインロッカーの大型化が背景にある」と説明します。近年、訪日外国人(インバウンド)などによる大型サイズのロッカーの使用が増えているからです。

「海外からのお客様はスーツケースなど大きめの荷物を持っていることが多いので、小型・中型のロッカーでは入らないという声があがっています。お客様の利便性を向上するために大型化を進めています」

現状、駅に設置しているコインロッカーは小型・中型が多くを占めますが、利用者のニーズに合わせた大型タイプを設置するにあたって追加コストがかかる、というわけです。

さらに、年々上昇する人件費も影響しているといいます。「利用約款に基づき、コインロッカーに入れて4日を過ぎた荷物は順次回収しているほか、ロッカーの不備がないかの点検を日々しています」(同)。

消費増税の影響は?

東京メトロは値上げについて、「2006年から導入を始めたPASMO対応式コインロッカーの導入や更新などに伴う管理費など、諸経費の増加によるもの」(広報担当者)と回答しました。

ちなみに、各社は今回の値上げと消費増税との関係を否定しています。

複数の鉄道事業者が乗り入れる駅は、管理者や運営形態の異なるコインロッカーが混在しています。そうした状況もあって、同一駅内でコインロッカーの価格差を作るよりも、「右へならえ」で同じタイミングで値上げをした可能性もありそうです。

気づかないうちに、じわりじわりと値上げされていく生活まわりのサービス。今後も思わぬところで人件費の高騰やインバウンドの影響が出てくるかもしれません。

<文:編集部 小島和紘>

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