はじめに

繰上げ返済後の前に確認すべきこと

家計の支出の内訳を拝見すると、無駄使いはされていません。かえって、食費3万円や小遣い4万円という金額の少なさが気になりました。食費は実家などからお米などの仕送りがあると少なくすむこともありますが、そうではないとしたら節約のご苦労の結果だとお察しします。

また、小遣いが夫婦おふたりで4万円というのも少なく感じます。精神的にストレスが溜まっていないか、心配になりました。節約はそれを実行する人にストレスがかかります。食費はご相談者様がやりくりされているとして、小遣いは夫婦ともに我慢されているということはございませんか。住宅ローン完済後にリバウンドが起こらないように、今一度ご検討ください。

ローンの繰上返済は、実行することでその効果を実感できますが、やり直すことができません。一度、返済した資金は戻ってこないということです。

現在、貯蓄残高は2100万円です。毎月の貯蓄額は16万円ですから192万円を毎年貯蓄できることになります。単純に計算すると、7年間×192万円(年額)=1344万円で、貯蓄額は現在2100万円なのが、7年後には3444万円になります。

ここから一括繰上返済の資金として、2500万円を引き出しますと、貯蓄額は一気に944万円に減少します。

マイホーム購入から10年も経過すれば、家電の買い換えもあるでしょうし、水回りやちょっとした修繕も出てくる時期です。また、マンションの大規模修繕工事の話も聞こえてくる頃です。マンションの修繕積立金に関するガイドラインに沿った修繕積立金であっても、不足すれば徴収や値上げも考えられます。

一括繰上返済をする前に、生活に必要なメンテナンス費用が、いつ頃、いくらかかりそうかを考えておき、問題がないかをしっかり検証してから実行しましょう。

個人事業のための蓄えは家計と分別して

今回のような、繰上げ返済をしたらいくらの効果があるのかなど計算上の試算は、数字として見ることができるので、その効果を実感しやすいと思います。しかし、実際は計画や試算どおりにはいかないこともあります。

会社員を辞めて、転職ではなく、フリーランスのライターになられた経緯や理由はここでは触れていらっしゃらないのでわかりません。

ローン完済をするというプランは退職される前から実行されていたことと思います。ライターとしての収入をどのように考えて退職されたのか、今一度、振り返ってみてはいかがでしょうか。と言いますのも、収入が減るのは予測ができたことだと思ったからです。

現状のままで進めば、7年後の一括完済は可能です。しかし、予定通りに貯蓄ができなくなることが起きてしまうと、ローン完済はあきらめるか、完済時期を延期するなどの事態は誰でも想像がつきます。配偶者が、万が一就労ができなくなってしまった場合は特に大きな打撃になります。

実は、私も会社員からフリーランスになった経験があります。これまでは決まった時間に家を出て帰ってくるという生活スタイルから、自宅と仕事場所が同じというスタイルに変わりました。会社員から在宅勤務に変わると、家族からは時間に余裕があるように見えてしまうことがあります。これまでやってくれていた家事や用事を手伝ってくれなくなった経験をしました。もしも、ご相談者様の家事負担が増えてしまうと、仕事に使える時間が減ってしまい、売上が増えない要因につながります。私の場合はなるべく早い段階で自宅以外の仕事場所を探しました。

会社員とは違い、業務を受託して収入を得るため、収入は一定ではありません。売上の目標額を立てておくことや、ライターとして正当な報酬を得るための料金体系、ブランディングや差別化を考えることも大切です。まずは、退職前の収入を目標にすることでもいいでしょう。

また、経費を差し引いた手元の収入をそのまま家計に入れることはせずに、事業ための蓄えとしていくらか残しておくと安心です。パソコンなど備品を購入する際にここから持ち出すことができます。個人事業としてのお金を、家計と混在させないように分別管理をして、家計にいくら入れると決めておきましょう。

新しい働き方、そして新しい生活のスタートを切られたばかりですね。何はともあれ、健康で仕事を続けられることが一番です。繰上返済の目標の7年後も、20年、30年後もどうかお変わりなくお過ごしください。

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのFPが答える「みんなの家計相談」の過去の記事一覧はこちらから。

この記事の感想を教えてください。