はじめに

記録的な暑さとなっています。5月26日に茨城県大子町で気温35.4度を観測。令和元年に関東で最初に気温35度を超える“猛暑日”を記録しました。昨年、関東で初めて猛暑日となったのが6月25日だったので、1ヵ月早い観測です。また、全国的に5月の観測史上の最高気温を更新する場所も相次いだようです。

こう暑いと、会社帰りに一杯、ご自宅で夕食の時に一杯と、ビール党でなくても、冷えたビールが飲みたくなる方も多くなるでしょう。5月24日に気象庁から発表された「向こう3か月の天候の見通し」では、6月は東・西日本で平年に比べて曇りや雨の日が少なく、平均気温は「高い」と見込んでいます。

今後もこの暑さが続けば、ビールの売れ行きも期待されます。株式市場では、ビール会社の株価上昇が期待されます。

今回はこのビールについて、別の視点から株式市場との関係をお話ししましょう。結論をお話しすると、「ビールが売れると株価が高い」ということです。


ビールを買う人が多いと景気が良い?

「そりゃそうだろう。景気が良くて株価が上がる環境なら、消費も良く、ビール飲む人も増えるのは当然」と考える読者も少なくないでしょう。しかし、実際の分析にはいくつか工夫する点がありますので、今回は少し丁寧にお話ししていきます。

古くからある経済学のお話で、「バターとマーガリンの関係」というのを聞いたことがある読者もいるでしょう。経済学では「代替効果」や「所得効果」と整理されて議論されますが、ここでは所得効果を取り上げます。

マーガリンはバターの代替物としましょう。人々の所得が増えればバターを買う人が増え、逆に所得が減るとマーガリンを買う人が増えるというものです。

この関係は、ビールと発泡酒にもあります。発泡酒はビールの代替物と見られるからです。「何を言ってるんだ、オレはビールより発泡酒のほうがうまいと思う」という方もいらっしゃるでしょう。ですが、ここでは多くの人の志向でとらえます。

となると、ビールと発泡酒を比較して、「ビールを買う人が増えると景気や株価が高く、発泡酒が売れると株価が安い」という仮説が立てられます。

12月にビールが最も消費されるワケ

ここで実際に分析が始められそうですが、もうちょっと待ってください。注意点があります。たとえば、「先月に比べて発泡酒よりビールへの支出が増えたか」というやり方は適切ではありません。ビールは発泡酒に比べても特に月によって売れ行きが全然違うからです。

1年のうち、家庭で最もビール代にお金がかかる月は何月になるでしょうか。今回の分析は、総務省統計局の家計調査から1世帯当たりのビール代の月別支出金額を使っています。

実は過去10年間で見ると、12月に最もビールへの支出が増えています。これは年末の休暇に向けて自宅でビールを飲む機会が増えるという効果もありますが、特に影響が大きいのはお歳暮の需要です。

第2位と第3位は7月と8月になります。これも夏のシーズンでビールを飲むという需要もありますが、お中元の影響が入ってきます。

一方、発泡酒に関して見ると、あまりお歳暮の贈答品として使われるケースは多くありません。このためは、12月は第6位の月となっています。月別に購入する傾向はビールと発泡酒で異なる点に注意が必要です。

そこで、このようなお中元やお歳暮の需要に影響を受けない、6月のデータを使うことにしました。

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