はじめに
「スーパーは不振」でも実は…
セブン&アイ・ホールディングスは、業態ごとの業績を情報公開しています。2017年2月期の第三四半期までの決算発表では、セブンイレブンの営業利益が1,871億円なのに対し、イトーヨーカドーはマイナス43億円の営業損失を出しています。つまり、イトーヨーカドーは赤字なのです。
この赤字をなんとかしなければならない、というのはグループが抱える経営課題です。では、どうすればいいのか? そこで食品に光が当たったのです。
「スーパーは不振」とよく言われますが、実はどの不振スーパーでも、食品部門は稼いでいます。
ダイエーの経営が行き詰まり、再生機構が支援をした際にも、結局は「食品部門を中心に立て直そう」という話になりました。全国的に規模を縮小した現在は、食品スーパー業態となって存続しています。
セブン&アイのグループのもうひとつのスーパーで食料品中心の「ヨークベニマル」は同時期でみると133億円の営業黒字です。
つまり、不振スーパーの立て直しのためには、衣料品や生活雑貨部門をなんとかするよりも好調の食品部門をさらに磨き込んだ方が早道だと、セブン&アイは考えたのではないでしょうか。
プライベートブランドがスーパーの救世主に
スーパーの経営にとって、プライベートブランドはふたつの価値を持ちます。ひとつは利幅が大きいこと。そして、もうひとつは商品設計を自分でコントロールできることです。
この商品設計で伸びてきたのが、セブンプレミアムです。ほかの商品以上に価値が高くなることを目指して商品力を磨き込んだ結果、今では「ナショナルブランドの商品よりもワンランク上の品質だ」と思えるほどの、ブランドイメージができあがっています。
そこで、イトーヨーカドーの立て直しにも、このセブンプレミアムが使えると上層部は判断したのではないでしょうか。
スーパーの食品売り場には必ず“ワンランク上”の商品が置かれています。バナナなら有機バナナ、豚肉なら三元豚やイベリコ豚といった商品群です。そして、そういったワンランク上の商品を買っていく消費者が少なからず存在します。
そのワンランク上の商品にターゲットを絞って、売れ筋のラインナップをすべてセブンプレミアムでそろえていくとどうなるでしょうか?
もともと利幅が大きかったプライベートブランドですが、ワンランク上の商品はそれよりもさらに利幅が大きくなる。セブンプレミアムが生鮮食品の分野で成功することによって、イトーヨーカドーにもたらされる利益は莫大なものになるでしょう。
今回のセブン&アイの戦略、ひょっとすると大きく化けるかもしれません。