はじめに

各地で梅雨入りとなり、本格的な雨のシーズンです。天気と同じように憂鬱な気分になったり、体がだるくなったりする方も少なくないでしょう。

梅雨の時期は、体温を上手にコントロールできなくなり、自律神経のバランスが崩れたりします。このため、気分が憂鬱になるだけでなく、頭痛になる方もいるようです。こうした症状は「梅雨バテ」と言われます。そのまま、夏本番を迎えると 「夏バテ」にもなり、つらい夏になってしまいます。

梅雨バテ対策といえば、十分な睡眠で疲れを取ることですが、やはり食事も大切。特に、ビタミンやミネラルが豊富な夏野菜をおいしく食べることも対策の1つです。

今は温室栽培も多いため、1年中、いろいろな野菜を食べることができます。しかし、夏に収穫を迎えるきゅうり、なす、トマトなどの夏野菜も、冬などの旬でない時期に収穫されたものに比べ、ビタミンなど栄養価が大きく違うようです。

そんな夏野菜の代表といえば、トマト。この時期、冷やしたトマトをそのまま食べても、とてもおいしく感じられます。そこで今回は、このトマトと株価について考えてみましょう。


野菜と株価をめぐる大胆仮説

2015年に行われた「国民健康・栄養調査」で、厚生労働省は「所得が低い人ほど、コメやパンなど穀類の摂取量が増える一方で、野菜や肉の摂取量が少ない」と指摘しました。やはり、多くの人がお米を食べることを優先しているようです。おかずはその次になり、おそらく野菜は最も後回しになりそうです。

となれば、ちょっとピンとくる読者もいるでしょう。「野菜を食べる人が増える時は、所得が高い環境で、株価も高いのでは?」ということです。

そこで調べてみました。データは総務省統計局の「家計調査」を使いました。この調査は、毎月1世帯当たり平均して、どれだけトマトを購入しているか、がわかるものです。

データを見るうえで、少し注意が必要です。2018年までの過去10年間を見ると、6月が一番トマトにお金を支出する月となっており836円です。最低は1月の426円。倍近く違います。やはり旬の野菜は、お店の店頭にも多く出されて、値段も手頃になるからでしょう。

分析対象は、旬の時期を取り上げることにしました。世の中へのインパクトが大きくなるからです。それでは、分析結果を紹介しましょう。

夏場の株価とトマトの売れ行き

家計調査のデータから、2006年以降で毎年6月のトマトへの家計の支出を取り出します。そして、それぞれ前年の6月との比較をします。前年比でどれだけ伸びたかの伸び率を計算するのです。

実は、データを少し工夫しています。同じように家計調査のデータを使って果実・野菜ジュース支出の前年の6月の比較を行い、その果実・野菜ジュースに比べて、トマトがどれだけ上回って伸びたかを求めました。

一方、関係を見るための株価は、同じ6月から翌7月までの2ヵ月間の騰落がどのくらいかを観察しました。

騰落率

グラフからは、おおむね連動した推移が見られます。果実・野菜ジュースを上回ってトマトを買う人が多い時には、株価が高いといえそうです。

調査結果から読み取れるもの

果実・野菜ジュースの伸びと比較したのは、次のような理由があります。果実・野菜ジュースは、健康に気を配る人の一定のニーズがあるとみられます。ですので、近年の健康志向によってトマトなどの野菜を買うようになった人が増える分を調整する意味があります。

とはいうものの、野菜の値段は変動も大きいものです、特にトマトが豊作の年は値段が安くなるため、トマトを買う人が増えることもあるでしょう。また、2011年はトマトへの支出が大きく減りましたが、東日本大震災の影響が価格などにも表れたという特殊要因もあったようです。

トマトへの支出と株価の関係を見るうえでは、このような特殊要因も考慮する必要があります。とはいえ、やはり厚生労働省が指摘したように、わが国では野菜は生活の余裕度につながるものです。

皆さんの周りでトマトを食べる人が、例年より多かったり、スーパーでトマトを買ってる人が多いようなら、人々の所得面での余裕の表れかもしれません。その場合、今後の株価に期待できるかもしれません。

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