はじめに

イタリア人はニンニクを食べない、そんな話を聞いたことはないでしょうか。

ブログやSNSなどでたまに話題にあがるので、目にしたことがある人もいるかしれません。しかし、イタリア料理といえばパスタで、パスタといえばニンニクというイメージは根強いもの。それだけに、イタリア人がニンニクを嫌うという話はちょっと意外に思えるかもしれません。実際のところはどうなのでしょうか。


ニンニク消費量トップ5にイタリアは入らない

イタリア人はニンニクを食べるのか、食べないのか。それを探るために、まずイタリアでどのくらいのニンニクが消費されているのかを見てみましょう。

オランダの食品業界情報サイト「FRESH PLAZA」の調査によると、2018年にイタリアで消費されたニンニクはおよそ6万トンとのこと。同年のイタリアの人口はおよそ6,060万人なので、1人あたりの年間消費量はおよそ1キロということになります。

それに対し、世界で最もニンニクの消費量が多いのは中国で、年間1人あたり14.3キロにもなるのだとか。以下、大韓民国(6.2キロ)、バングラデシュ(2.6キロ)、ロシア(2.2キロ)、インドネシア(1.8キロ)と続きます。

日常的に食べる料理の風味付けやスパイス、またキムチなどの伝統食品に使用する国はそれだけ消費量も多いといったところでしょうか。参考までに、日本での年間消費量は1人あたり330グラムほどです。

こうして見てみると、イタリアのニンニク消費量は日本のおよそ3倍。数字を見る限り、世界的に見て多いとは言えないまでも、決して少ないわけでもなさそうです。

イタリア人がニンニクを「食べない」理由

さて、それではなぜ「イタリア人はニンニクを食べない」と言われているのでしょうか。結論から言うと、確かにイタリア人はあまりニンニクを「食べません」。

イタリア人は食べ物の匂いに敏感な人が多く、香りの強いニンニクはあまり好まれません。日本でも平日のランチや人に会う予定がある場合は避ける人もいますが、イタリア人のニンニク嫌いはもう少し極端なイメージ。空間に匂いが漂ってくるだけで顔をしかめる人も少なくないのです。

ニンニクを加えたほうが美味しい料理でも、ニンニクそのものを口にすることはあまりありません。パスタに入れる場合はオイルを温める際に塊のまま投入し、香りがオイルに移ったら取り除きます。ニンニクを刻んで料理に混ぜ込むことはあまりしないのです。

ニンニクの匂いだけでなく、胃もたれするのを嫌う人もいます。ニンニクは非常に殺菌力が強いため、食べ過ぎると腸内の菌が死滅してしまい、胃もたれや胸焼けの原因になることも。イタリア人はよくニンニクを「消化できない」と言って敬遠しますが、確かにたくさん食べた後は、ずっと胃に残っているような感じがすることがあります。

イタリアのピッツァ

ピッツァの定番であるマリナーラにはニンニクが欠かせませんが、塊のままごろんと入れて焼き上げている店をよく見かけます。こうすることで、食べたくない人は自分で簡単にニンニクを取り除くことができるのです。

また、イタリア料理にはニンニクを多用するイメージがありますが、実はこれはナポリやシチリアなど、南イタリアのレシピに多い傾向です。ミラノやヴェネツィア、トリノなど北イタリアの郷土料理はニンニクをほぼ使いません。

そして、日本に入ってきているイタリア料理はどちらかと言うと南イタリアのレシピが多く、そのためイタリア料理=ニンニクのイメージが定着していると考えられます。

というわけで、「イタリア人はニンニクを食べない」と「イタリア料理にはニンニクを使用する」は実はどちらも正解なのです。ニンニクの匂いや胃もたれが気になる方は、オイルに香りだけを移すイタリア流のレシピを試してみるといいかもしれません。

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