はじめに
受診案内の工夫と受診率の向上
このようななか、近年、一部の市町村では、住民に向けて送る受診案内の形状やメッセージの伝え方を工夫する取り組みが行われています(注3)。
国立がん研究センターの保健社会学研究部によるこの「がん検診の普及プロジェクト」では、検診に無関心な人や検診の有効性に疑問を感じて検診を受けずにいる人等に対し、それぞれ効果的なメッセージを伝えることで、受診率の向上をはかる取り組みを行っています(図3)。
このような取り組みは、さまざまな理由で受診していない人々の行動に変化を促す新たな試みとして注目されます。
出典:東京都福祉局保健政策部健康増進課「効果的ながん検診受診率向上の手引き~受診率50%の達成を目指して追加版」8ページ
健康チェックにも、年間スケジュールを
筆者が所属する第一生命経済研究所が2017年1月に実施した「今後の生活に関するアンケート調査」によれば、10年後のがん(悪性新生物)の発症・再発・悪化等に不安を感じる割合は、40~50代の男性で6割弱、女性で6割強から7割弱を占めます。
また、近年では以前に比べ晩婚・晩産型のライフコースを歩む人が増えていますが、この調査によると就学前の子どもがいる40代女性では不安を感じる人が72.1%と、特に高くなっています。
近年では乳がんを含め多くのがんで生存率が向上しています。それでもがんを経験された方やそのご家族の多くが、自身やご家族の人生の残り時間を意識し、人生設計について深い思いで見つめ直された経験をもっておられるようです。
ミドル世代にはこなさなくてはならないスケジュールが多く、仕事やプライベートの予定に比べ、自身の健康チェックの機会がおろそかになりがちな人もいるかもしれません。乳がんの早期発見には月に一度の自己検診も重要といわれます。今回ご紹介したがん検診のサイクルと合わせて、健康チェックの機会を大切に考えていただければと思います。
注1:がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成20年3月31日付健発第0331058号厚 生労働省健康局長通知別添)注2:東京都福祉保健局「平成30年度東京都がん予防・検診等実態調査報告」2019年5月
注3:溝田友里、山本精一郎(2017)「がん検診の効果的な個別受診勧奨 受診勧奨用資材の開発と提供に よる自治体のがん検診受診率向上対策支援」『保健師ジャーナル』vol.73 No.12:991-999.