はじめに

運河を周遊するボートで普段は見られない景色を眺める

「キャナルフライデー」にはおいしいフードとビールだけでなく、「ボートトリップ」も用意されています。「武庫川渡船」という渡船会社の協力により、ボートで尼崎運河を周遊してくれるそう。普段は観光船など無い場所なので、今回見られる景色は貴重なのだとか。もちろん乗ってみましょう。

キャナルフライデー

「武庫川渡船」の方によれば運河は淡水と海水が混ざり合っており、ボラやチヌがいて、スズキが釣れることもあるんだとか。かつては水環境がよくなかったそうですが、近年、2012年に水質浄化施設が作られて以降は水質が改善されつつあるそうです。

尼崎運河のシンボルになっているという「であい橋」も川面から見上げると迫力があります。
キャナルフライデー

ボートを降りてしばらくすると夕暮れが迫り、さっきまでとはまた雰囲気が変わってきました。徐々にカラオケステージが熱気に満ちてきています。それにしても運河沿いで「北酒場」などの歌を聞くというギャップが面白い。

私もほろ酔い気分で一曲歌わせてもらいました。下手な歌声でも、広い空に吸い込まれていくようで気持ちいいものです。

日が落ちてあっという間に辺りは暗くなり、今日のイベントにあわせて特別にライトアップされている「であい橋」がムーディーに浮かび上がります。
キャナルフライデー
暗くなった川沿いで熱唱する人とそれを見守る人々。改めて面白い眺めです。
キャナルフライデー

最後はトランペットとピアノの二人組によるジャズライブも行われ、アーバンな気持ちで夜の運河を楽しむことができました。

仕事帰りの人々やカラオケ好きが集結

会場には多くの人が集まり、それぞれ自由にのんびり楽しんでいる様子でした。イベント終了後、主催者の一人である若狭健作さん(CANAL FRIDAY Partners/尼崎南部再生研究室)にお話を聞いてみました。

――すごく楽しかったです。今回のイベントが開催されるに至った経緯を教えてください。

「尼崎運河ではこれまでにも『運河クルージング』などのイベントを企画してきましたが、その多くが土日開催だったため、周辺で働く人たちが遊びにくることはありませんでした。そこで金曜の夜に仕事帰りにこのロケーションを楽しんでもらい、運河で遊ぶ仲間を増やしたいと思い企画しました。ビールとカラオケ、尼崎でとれる魚のフライをフライデーに楽しもうという趣旨です(笑)」

――会場の辺りは普段はどのように活用されている場所なのでしょうか?

「水質浄化施設として運河の水質改善を進めるための実験が行われたり、月2回はスタンドアップパドルボードというスポーツの活動拠点になっていますが、日常的には使われていません」

――そんな運河が賑やかになった特別な一夜だったのですね。イベントの反響はいかがだったでしょうか?

「一週間前に会社帰りの人たちや近所の工場でチラシを配ったところ、仕事帰りに200人ほどの人が来てくれました。他にも、近所の“歌ウマおじさん”たちが集結したり、中には『“カラオケ大会”と検索して見つけた』と芦屋から来た方もいました。屋外カラオケとライトアップされた運河のロケーションがハマりすぎることを実感しました。手応えしか感じていません!」

――経済的な面でも成功だったのでしょうか?

「最初は5万円のカラオケ機材リース料を払えるのかと心配でしたが、みなさんがたくさんビールを飲んでくれたおかげで、赤字はまぬがれました。といっても、関わるスタッフは全員タダ働きなんですが(笑)」

――他に、開催にあたって苦労された部分があったらご教示ください。

「みなさんがカラオケを歌って盛り上がってくれるか心配でしたが、日が沈むと羞恥心がなくなるようで最後はマイクの奪い合いのようになってよかったです」

――今後もこのようなイベントを開催されていく予定でしょうか。

「次回は9月27日に開催することが決定しました。次はもっと音響設備を充実させたり、新しい企画も考えています」

地域を活気づけるために、肩ひじ張らず柔軟に、遊び心あふれる姿勢で取り組む。そしてその楽しさが自然に周りに波及していく。たとえ今はまだ小規模な催しでも、これからの時代の町おこし、地域活性についてのヒントをくれる部分が多いように感じました。

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